■ ■ ■

お、俺は一体どうしたら……。隣が見れません。みょうじさん来とるもん! そしてブンちゃんはなんでここにおるん。お前の席前じゃないんか。

「なぁ、お前なんでさっきから固まってるわけ」
「か、かか固まってなんかないぜよ」
「嘘つけ。思いっきり吃ってんじゃねーか」
「何言っとるん? 聞き間違いじゃ聞き間違い」
「じゃあこっち向けよ」

無理、マジ無理じゃ。みょうじさん座ってるもん。緊張しすぎて見れん。つーか、ブンちゃんみょうじさんに近すぎ。

「お―い仁王、帰ってこーい」

あ、俺みょうじさんにあいさつしとらん! するべき、するべきだけど何コイツ? とか思われたらどうしよう。みょうじさんに限ってあるわけないと思うけど。あいさつせんのは感じ悪くなるし、どうすればええんじゃ。今日最大のピンチ到来。

そのとき、ぱちっと目があった。
一瞬の間があってみょうじさんがにっこり笑った。

「おはよう、仁王くん」
「ん。おはよ」

みょうじさんからあいさつしてくれるなんて、朝から幸せすぎる。笑った顔めちゃくちゃ可愛い。

いや、待て待て待て。俺ちゃんと笑ったか? すんごい無愛想だったような。
うあーと机に突っ伏す。

「さっきからなんなんだよお前。気持ち悪いっつーの」

ブンちゃんが笑ってるけど、そんなこと知ったこっちゃない。今はみょうじさんの方が大事じゃ。

「ブンちゃん。さっき俺笑っとった?」
「ブンちゃん言うなあほ。あー、微妙だな。ちょっと引きつってた」
「やっぱりか……」

なんなん俺。みょうじさんに嫌われたらどうしよう。俺生きていけんかも。

「つーか、お前ってみょうじのこと……」
「黙れ丸井」
「こえーよ。だろうなとは思ってたけど。ふーん」

今の聞こえとらんよな。丸井のくせに。もう奢ってやらん。
そうこう言ってるうちに鐘がなった。

「お、始まんな。また来るわ。ちゃんと話聞かせろよ」

言いたいだけ言って、さっさと自分の席に戻っていった。
丸井に話すと最終的に幸村にまで広まる。それは避けたいから絶対に逃げきってみせる。

詐欺師なめたらいかんぜよ。
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