「じゃあ改めてよろしくな!」

カラオケにやって来ました。最初は近くのファミレスにいたんだけど切原君がテンション上がっちゃったみたいで。真田君が、ね。拡声器いらないなって思ってしまったよ……。びっくりしました。

とりあえず落ち着いて、今は丸井君が熱唱してるところです。すごく上手で更にびっくり。


「じゃあ次俺が歌ってもいいッスか?」
「俺が先じゃ」
「えぇー!!」
「まぁ聞いときんしゃい」

丸井君も上手かったけど、仁王君は似てる。歌い方もそうだけど、声がそっくり。テニス部ってなんでもできる集団なんだっていうのがよく分かります。というかみんなで集まることが楽しくて仕方ないんだろうなあ。笑顔が絶えなくてみんなずっとわらってる。ふと幸村くんが隣に移動してきた。困り顔だけどやっぱり楽しそう。

「みょうじさん、ごめんね? みょうじさんの歓迎会なのに。みんなテンション上がってるみたいで」
「ううん。大丈夫だよ。聞いてるだけで十分楽しいし!」
「そう? ならいいんだけど。あ、次俺だ」

聞いててね、とマイクを持って立ち上がる幸村君。流れ出したのは私の大好きなアーティストの曲だった。知っている人があまりいなくて残念だったんだけど、思わぬところで仲間に遭遇した。
幸村君を見上げるとにっこりと微笑まれた。

「うわぁ…」

か、かっこいい。けっこう激しい曲をさらりと歌いこなしている。知っていたわけじゃないんだろうけど、私が1番好きな曲だ。

「ぶちょー! すごいッス!!俺感動したッス!!」
「幸村君てこんなん歌えたんだな!」

いつの間にかみんな聴き入っていたようで拍手が起こる。私もみんなと同じようにパチパチと手を打った。ありがとう、と言いながら幸村君はまた、私の隣に腰を下ろした。

「初めて歌ったから、声が裏返っちゃったよ」
「えぇっ! 初めてだったの!? すっごく上手かったよ!」
「本当? 照れるなぁ。そうだ、みょうじさんも歌おうよ。今日の主役はみょうじさんなんだから。ね?」

こてんと首を傾げて見つめる幸村君を断れる人がいるだろうか。

「う、じゃ、じゃああんまり得意じゃないから、1曲だけ……」

あんまり、違うな、全然得意じゃないんだけど、気合いで歌います。みんな次は耳栓を持参してきてください。

驚きました

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