あの後、結局断り切れずにマネージャーになりました。
いや、細かい仕事とか好きだし幸村君の力になれるのは素直に嬉しいです。
でも、私の他にマネージャーになりたい子はたくさんいて、もっとみんなのサポートをしたい人がいるかもしれない。
もちろん、やるからには全力でと思っているけれど、本当に私で良いのかな、なんて。

「みょうじせんぱーい! タオルくださーい!」
「次こっちもな!」
「はいはーい!」
「あ、終わったらスコア書いてもらえるかな」
「了解です!」

途中からそんなことを考える暇も無くなって、動き回っているうちに時間はあっという間に過ぎていった。

「集合! 今日の部活は終了。明日は午前だけだから間違えないように。解散!」

幸村君の号令で部活は締められ、部員達はコートから次々に出ていく。残っているのはレギュラー陣だけになった。
ぽん、と頭に手を乗せられる。見上げればその手の持ち主は柳君だった。

「よく頑張ったな」
「そうじゃのー。割と量あったんにちゃんとやっとったしな」
「ちょっと失敗してたっぽいけど良いんじゃねーの?」

またふわりと乗せられる感覚がして隣を見れば、今度は幸村君が手を乗せていた。気恥ずかしくなって俯くと幸村君がクスッと笑ったのが分かった。

「本当にお疲れ様。やっぱり頼んで良かったよ。楽しめたみたいだし」
「もっとダメかと思ってましたけどみょうじ先輩って意外としっかりしてたんスね!」

確かに終わってみればすごく楽しかった。大きな失敗はしなかったし、褒められるとまた頑張ろうって思う。そういえば、2年の子は自己紹介してもらって名前が判明した。
覚えてろよ切原君。

「赤也」

幸村君が声をかけると切原君が硬直して、みるみる血の気が引いて真っ青になった。どうしよう隣が見れない。

「ごめんなさいッス!!」

バッと勢いよく頭を下げられた。なんか謝り慣れてるような気がする。姿勢がすごく綺麗です。
まあ私の代わりに幸村君が怒ってくれたみたいなので許してあげよう。

「なぁ幸村君、今日みょうじの歓迎会しよーぜ!」
「そうだね。みょうじさんの都合が良ければだけど」
「うん。全然大丈夫だよ」
「よし決定じゃの」
「あ、やるからには全員参加ね」

にっこり笑う幸村君にみんなさっきの切原君みたいになった。

今日は新しい幸村君を見たような気がします。

馴染みました

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