銀土





「自由だなあ」


彼は両手を広げてそう呟いた
何も知らない爽やかな風が
彼を通り抜けて
一本でも彼に近づけば
彼は今すぐにでも、


「ここに来ると自由になれる」


こっちを振り返りもせず
彼は空に向かって微笑んだ
とても優しい声で、
優しい風と共鳴して
彼は その足 を


「だったら俺はずっと自由になりたい」


初めて振り返った彼は
僅かにくしゃりと顔を歪めて


「これで、俺は」


自由。自由なんだよ。
そう言ってまた笑う彼が
滲む視界から消えていく
彼が、
彼が






最後に彼が笑った理由は
彼が望んだ、俺が望む、
その自由は
彼を呑み込んだその空が
きっと

きっと、


「ばか、やろ…」


すべてを知っているんだ









翼になりたい
(そうすれば共に、自由なはずでしょう)

120819

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