銀土
いつの日か、ぼんやりと眺めた夕日を思い出した。
あの日の夕日は大人になった今でも覚えてて
夕日を背にして笑った彼を、忘れたことなど一度もなかった。
「あとどれくらいあの夕日が沈んだら、おまえをさらえるのかな」
そう言って困ったように笑って、夕日をゆっくり振り返った彼の 鮮やかに映えた銀髪は
彼を染めるあの真っ赤に燃えたものよりも
ずっとずっと綺麗で、たまらなかった。
「…坂田」
もうずいぶん日は落ちた。
あの日と同じこの場所で
もう何十年、彼の言葉を信じてるだろう。
大人になった。
大人になったんだよ、坂田。
だからもういいだろ、
なあ。
はやく。
はやく、あの日と同じように真っ赤な夕日を背にして、
迎えにきたんだ って、
笑ってくれよ。
坂田。
なあ、
「坂田…」
目の前の墓石は、今日も真っ赤に照らされていた。
沈まない夕日
(あの日から、ずっと)
120730
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