同級生 銀土
好きだよ、と彼は呟いた。辺りはもう真っ暗闇、彼との距離感はゼロ。震えるくちびるが重なり合う。ヒヤリとした冷たさに身震いをした
「…逃げねーの」
くちびるを離した彼が呟いた。逃げねーの、だと。じゃあなんだよこの、肩を強く握りしめた手は。
おまえはそう言えば国語は苦手だったよな。だからお前に正しい日本語を教えてやる。
「逃がさねー、の間違いだろ」
ふ、と笑って今度は俺から。目を丸くした彼はすぐにその目を細長くして、両手両腕で俺を抱きしめた。
距離感ゼロ、どうせならひとつになっちまえばいいのにと願ったある冬の日の帰り道だった。
ゼロから始めましょう
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