同級生銀土





「俺は劣化品だよ」


哀しげにそう言って笑った彼は、屋上の手すりに手をかけた。今にも柵を飛び越え飛び降りてしまいそうな細い、その腕を俺は必死に、しっかりと掴んだ。そんな俺に彼は驚きも笑いもせず、ただただ延々と、どこまでも青い空を見つめていた

「劣化品とそうじゃないものの違いは、6022と1990、こんなにもあるんだよ」

風に揺れる銀色の特殊な髪を引っ張りながら彼は言った。なにを、と口を開こうとした俺より早く、彼が言葉を続けた。目線が絡み合う。いつもよりどす黒く沈んだ真っ赤な瞳に、背筋が凍ったような、気がした

「遺伝子なんてなくなればいんだよ」

なにを

「そうすれば、兄貴は、家族は」

なにを、

「幸せになれたんだ」


遺伝子を俺に分けなければ、兄貴の分だけで終わりにしてれば、あんなことにならなかったんだよ。暗に生まれてこなければよかった、と笑う彼がとても弱々しく俺の瞳に映った。いつもはバカみたいに明るくてうるさいこいつが、まさか、こんなに弱々しく俺の瞳に映る日が来るなんて。人は見かけによらない、という言葉を思い出して、彼が今までどんな苦しみを背負ってきたか、気づいてしまいそうで涙が出そうになった。

「土方ごめんね」

俯いてしまった俺の頭上から、微かに震えた声がした。ぽた、と涙が地面に落下して俺は首を横に振る。ごめんね、なんていらない。いらない。いらないから、早く、その右手に掴んだ手すりから手を離してくれ。そう、言おうと顔をゆっくりとあげた、

「劣化品を買ってくれてありがとう、ごめんね」

瞬間


「、坂田!!」


彼はふわりと
足を浮かせた

掴んでいた手はいつの間にか虚空を握りしめていて、急いで手すりから身を乗り出して必死に、その手を伸ばす。彼の、彼の、彼を

「坂田あ!!」


彼を掴んでいた右手はまたしても虚空を握りしめただけだった






6022の中の1990

110223

優性と劣性は優秀、劣るって意味とは違うんだけど、優とか劣とか授業で見て嫌な気持ちになる坂田(…)
全部坂田の主観です



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