銀土 
※土方死んでます






「はい、銀ちゃん」
「…」
「いいえどういたしまして」

にこりと笑う彼女に、俺はありがとう、と言葉ではない言葉を発した。
よいしょ、と言って食器を片付けてくれる彼女の背中をみて、おっきくなったなあなんて思ったりした


あの悲劇から一年経って、ようやく街は復興作業にとりかかった。
俺もほんとはそれに参加してやりてーし、なによりまずあいつに会いに行きたい。
一年前、別れを告げた彼の元へと。



「あ、そろそろ時間アルな」

支度しなきゃ、と言いながら彼女はパタパタと家の中を行き来する。そうか、もう時間か
ちらりと時計をみやると、午前11時15分を回っていた。俺の、一番嫌いな時間が経とうとしていた







「…よし、じゃあわたしは水替えてくるネ」

線香のいい香りがする。その香りを嗅ぎながら俺は彼女に頷く。それをみた彼女はにこっと大きく笑って、川まで走っていった。

「…」

さわ、と吹く風が頬を触る。ああ。いい、風だ
目を閉じて風を感じる。
瞼に鮮明に映る、あいつの姿。
元気でやってるか。そっちは楽しいか。こっちはなあ、うん、それなりに幸せ感じて元気にやってるよ。元気って言っても、まあ、体は動かねえし喉は潰れちまったけど。でも。
おまえが命懸けで守り通したもんは、俺の生きる希望になったり、してたりして。
墓前に心で話しかける。
さあ、とまた気持ちのよい風が吹いた
まさかおまえか、なんて
乙女な思考もっちまったなあおれも、

「…」
「銀ちゃんお待たせ…、」
「…」
「銀ちゃん?…泣いてる、アルか?」

ざあ、と
一際大きい風が吹いた
わ、という神楽の声と共に抱えていた花びらが舞う
霞む景色の中それをただずっとみていた







「生まれ変わったらまたおまえに会いにいく」

だからその時まで。
そういった土方の声は震えていた。
そうか、と震える土方の体をそっと抱きしめて応えれば土方は、絶対に、とまた震えた声で言った。
そして別れを告げた彼に最後のキスをする

「、銀」
「…」
「愛、してる」

いつも素直になれない彼が初めて愛の言葉を口にした。
最初で最後の彼の慣れないこの愛の言葉を、この先一生忘れないようにと心の奥底に深く、深く刻みこもう。
ありがとう土方。
俺も、おまえを、

「愛してたよ。本当に」


午前11時15分。
彼は彼の最期の場所へといってしまった









「銀ちゃん」
「…」
「ずっと辛かったんでしょ?」
「…」
「ずっと泣きたかったんでしょ?」
「…」
「銀ちゃんは頑張ったアル」
「…」
「だから今だけは、」






生まれ変わったら。
生まれ、変われるのなら。

来世ではまたおまえとこの恋愛の続きをしてみてえなあなんて

信じてなどいなかった彼の最期の言葉を、俺は信じてみようと思う。



来世ではちゃんと、おまえを幸せにできますように。




こひねがう
110221

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