現代銀土





「ん」
「…」

チャリ。重みのある金属が掌にのる。重みのわりに軽く聞こえたその音は、いつまでも耳に残った。
サヨナラだ





「…」

バイクの音が窓の外から聞こえた。ぎゅっと唇を噛みしめながら耳を塞ぐ。大好きだったあの音も、今となっては聞き苦しいだけ。大好きだったあの、背中も。
今となっては苦しい思い出だ


「…」

やはり限界、というものは存在した。俺達の未来にはいつまで経っても終わりが見えない、だから、と彼は言った。終わりが見えない。その意味くらい、すぐにわかった。俺達の恋愛には、愛の形をおさめる、その終わりがないということ
いつまで経っても俺達は、「恋」のままで終わってしまう
彼はそれに耐えられなかった。
俺たちは何があっても絶対に、変わらずにいられると信じていたのに。容易く壊されてしまった。

「形なんかいらねえ」

俺はおまえさえいればそれだけでよかった。ただ、それだけでよかったのに。
もうすでに聞こえなくなったバイク音が、今は愛しく感じる。もう一度聞きたい、そう矛盾している
聞きたいだけど聞きたくない。俺は、きっとこの先ずっと、

「あ…」

バイクの音が窓の外から響く度に、期待してしまうのだろう




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110221

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