現代銀土 死






冬になると思い出すんだ
マフラー片手にだれかさんの家まで突っ走ったこと、
寒い寒い公園のベンチで彼に想いを伝えたこと。
カップルでにぎわう街中でこっそりお揃いの手袋をして、こっそり手を繋いだこと、
イルミネーションがいつもより綺麗でふたりして泣いたこと。

どの季節を巡っても、ふたりで過ごしたあの冬だけは色褪せることはなかった。
彼が確かに隣にいて、
彼が確かに幸せそうに笑ったあの冬の日。

なあ。
今年の冬もまた、
おまえと過ごせたらよかったのに。


「…ひでえよなあ」

ヒヤリと冷えきったベンチにこつん、と左手を落とす。同時に視線もそこへと落とした。
ふたり並んで座ったベンチはもっともっと、狭かった。もっと寄れよ寒いだろうが、うるせえ、あんまこっちくんな。そう言いながらもこの左手を握っていたあの温かいてのひらは、あの冬の日に静かに消えてしまった。


「…ひでえ、」

ぐ、と左手を強く握った。
握った拳にちらほらと雪が落ちた。
見上げた空はいつもより暗く、いつもより低かった。
あの空のむこうに、
おまえはいるんだろうか。
涙が頬を伝った。



「土方あ」

声にならない声で何度も彼の名前を呟いた。
返事をしてくれよ。
なあ。
逝かないでくれよ。
独りにしないでくれよ。
なんで。
なんで俺より先に、
なんでこんな早く、


「ひじかたあ、」

幸せそうに笑うあの笑顔をもう一度、俺の隣で見せてほしかった







返事してよ
(幸せだったの、?)
110221

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