今日は、普段は見えない星の群集が格別に瞬く日だった。ベランダで手摺りに肘掛けネオンの様にチカチカと輝く星を見上げて居れば、後ろからガタッと音がしたので振り向いた。

「遊星?どうかした?」

「風邪をひく。」

窓を開けベランダに出て来た遊星に微笑んでそう問えば、そう言って肩に毛布を掛けてくれた。自分は何時間室外に居たんだ、と思う程私の体はすっかり冷え切っていた。ぶるりと身を震わせれば横に立っていた遊星の腕が伸びて来て、その手はそっと私の頭を撫でた。優しい手の心地良さに身を預け、遊星の体に凭れ掛かり、数分目を閉じてから遊星の顔を見上げれば、さっきまでの私の様に数多の星を見上げていた。そのコバルトの瞳は星が入り込んだ様にキラキラと光り輝いていて、思わず見惚れてしまった。じっと見詰めている私に気が付いたのか、こちらを見る遊星と目が合って何故か慌てて逸らしてしまった。私の不自然過ぎるその行動に、遊星が首を傾げているのが上目で見えた。私達はあまりべらべらと喋るタイプではないので、この静かな空間は非常に居心地が良かった。また星を見る体勢を取れば、夜空に一筋の曲線がサッと光を描いた。

「遊星、流れ星!」

私は流れ星を目で捉えた瞬間、心中で願い事を唱えた。流れ星の軌跡は一瞬で彼方へと消えてしまう。だからこそ、価値があるもののように思える。

「ね、遊星は何か願い事した?」

「ああ。」

「何てお願いしたの?」

「…内緒だ。」

「ケチー!」

頬を軽く膨らませ言ったが、遊星にも思うところがあるだろうから、勿論無理矢理に聞き出すような事はしない。私の願い事も、そう簡単に口に出せるようなものじゃないから。

「いつか、私のした願い事…聞いてくれる?」

「…ああ。その時は、俺の願いも聞いてくれるか?」

「勿論!」

穏やかな時が流れる中で、私達は微笑みあった。



無題のコンチェルト 100226
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