「…んん?これは狒々のお面?」



ぬらりひょんが居間に行くと、机の上に狒々がいつもつけている能面が置いてあった。



「何でこんな所に……?」


彼が着けている面。あまりしっかりと見たことがないなと、手に取りまじまじと見てみる。
「………こわっ!」


「これ一度つけてみたいと思っていたんだじゃよなぁ……」



キョロキョロと辺りを見渡すと誰もいない
よしっと1人頷くと、嬉々として能面を顔につけようとした…が、


「……あり?」


面が小さくて良いようにつけることができない。


「んー?おかしいのぉ」



ぬらりひょんが面をつけようと格闘していると、牛鬼がやってきた



「総大将、今度の総会の件ですが……てっ?!何をされているんですか!?」


「うおっ!?」
パキッ


「………って!ああァァっ!!」


いきなり声を掛けられて驚き、手に力が入ったせいか、見ると狒々のお面に綺麗にヒビが入っていた。


「どどど…っどうしてくれるんじゃァァ!!お前がいきなり声をかけたりするから驚いてお面を壊してしまったではないか!」

「私のせいですか……って!それ狒々の!!」

「あぁぁどーするかのぉ…」



がっくりと項垂れるぬらりひょんの肩を牛鬼が慰めるように優しく叩く。



「これはもう本人に謝るしかありませんな…」

「…そう簡単に言うがなぁ牛鬼よ、狒々のようにいつもお茶目な奴程怒ったら恐いに決まってる。良いのか?」

「良いのかって怒られるのは総大将ですから。」

「冷たいのぉ……あ!もしかしたらこのヒビがくっつくようにギュッと押したら……」
ビキビキ



「……あ。」

「なっ!何してるんですか貴方は!!もっと酷くなったじゃないですか!」


面は更にヒビが広がり、今にも割れそうな状態になっていた。


「ちょっヤバイ、どーしよ。取りあえず町に行って饅頭でも…」

「現実逃避せずに落ち着いて下さい総大将!」








そこへ、偶然居間を通り掛かった雪羅があわてふためく2人を見かけ寄って来た。



「アンタ達なにしてんの?」

「雪女…」


しょんぼりする2人を不思議そうに見た彼女だが、ぬらりひょんの手元を見て彼らと同じように慌てた。


「なっ・・・何コレ?!狒々のお面ビッキビキじゃない!」

「助けてくれよ〜雪羅ぁ」

「なっ!名前で呼ばないでよっ!!//」

「これ、お前の力でどうにかできんか?」

「…凍らせてみたらどうかしら?」
ふぅ〜


雪羅の力で狒々の面は凍りつきピカピカと光っている。


「おぉっ!何かこれ良い感じじゃね?」

「ふん、良いんじゃない?」

「…そうですか?何も解決していないような・・・」

「いや、あいつのことじゃ。このピカピカの面を見て喜びのあまりヒビには気づかん。」

「いや、狒々もそこまで馬鹿では・・・」

「よし、これを慎重に…」


そろそろと机に置こうとすると、凍ってツルツルになった狒々のお面はツルッと手から滑った。


「あ。」


ガシャアアアアン



「「「ああああああああああああああ!!」」」



凍らされていたお面は落ちた衝撃で粉々に・・・



「どうしよう…原型全くない」

「ここは牛鬼。お前しか頼れるやつはおらん!」

「愛の力でどうにかするのね」

「なに人に押し付けているんですか!!」

「「じゃ、よろしく。」」








………………そして、結局



「あ、あの…狒々…」

「おぅっ牛鬼!どうした?」



牛鬼の顔を見て狒々は顔をぱぁっと輝かせる


「実はお前に謝らないといけないことがあるんだ…」

「ん?何じゃ?」

「こっこれなんだが………」



そう言って、恐る恐る粉々になったお面を差し出す。



「……?何じゃこれは?」

「いつも着けている狒々の面だ…すまない…色々あってこんな風にしてしまった………」

「………………。」



今までにこやかだった狒々の顔がスッと無表情になった。



「す…っすまん…!お詫びに何でもする。」

「…………牛鬼……」

「はい……」

「何でも言うこと聞くんだな?」

「あ…っああ!」


ブンブンと勢い良く顔を縦に振る牛鬼をしばらく見ていたが、いきなりにんまりと笑うと嬉しそうに牛鬼の頭をぺちぺち叩いた。



「そーかそーか。何でも言うこと聞くのか〜ムフフ」


「………?」



ころりと態度がいつものように直ったことに驚く牛鬼をよそに、狒々は楽しそうに命令をした。


「じゃあ、おんぶして建物内を一周しろ!」


「あ…っああ……て、怒ってないのか?」


「おう。これでちゃらにしてやる」



そこに先ほどまで隠れていたぬらりひょんと雪羅がほっとした顔をして出てきた。



「流石狒々!懐が広いのぉ」


一件落着というように一人うんうんと頷くぬらりひょん。


「ふむ。では早速行くぞ、牛鬼!!」


「ああ。」


牛鬼に肩車をされ行こうとした狒々が、ふと思い出したように振り向きにっこりとして言った。



「あ、帰って来たらお前後で絞めてやるから大人しく待ってろよ」


その顔は笑っていたが目は全く笑っていなかった。


「はっ…………はい」


その後、数日の間ぬらりひょんの姿を見たものはいなかったとか……





END.


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