はぁ……



洋平は退屈なホームルームにため息をついた。
教師の話を右から左へ流しつつ、窓の外をちらりと見て思わず眉をひそめる。


天気は最悪で土砂降り


学校に着くまではカラッと晴れていた空も、ホームルームが始まる頃にはどんどんと曇っていき今ではこの有り様である。
朝が苦手で機嫌が良くない洋平にとって、この雨は更に苛立ちを増幅させる要因となった。

小さく舌打ちしてチラリと後ろの親友の席を見るが、そこは未だ空席。
どうやら遅刻らしい。

いつもは親友の顔を見ると自然と晴れていく気持ちも、彼が不在のため晴れることなく外と同じどんよりとしたままだ。




………あいつは傘を持って来ているのか?




先程から降りだした雨を見て、親友は傘を持って来ているのだろうかと洋平の胸にじわじわと不安が広がる。
雨で濡れて風邪を引くようなことがあったらどうしようかと心配になる。




洋平が1人花道のことで、あれやこれやと気を揉んでいるとドタバタと騒がしく廊下を駆ける音が聞こえてきた。
それに洋平はピタリと思考を止め、パッと扉を振り返り足音の主の登場を待つ。他の生徒も何事かと扉を見つめた。






「だぁーっ!クソッ!」

叫び声とともに扉がガラッと勢い良く開き、足音の主が教室に飛び込んできた。


それは雨でずぶ濡れになった自分の親友。


姿を見ると今まで心の中に居座っていたモヤモヤとしたものが取り払われる。
やはり傘を持っていなかったのだろう。
全身びしょ濡れで花道の歩く跡に水の後がひいている。

慌てて洋平が声をかける。



「花…っ!お前びしょ濡れじゃねぇか!」

「ふぬ…今日は雨降らねぇってお天気おねーさんが言ってたのに、途中から降りだしてな」




「あの…今はホームルーム中なんだが」


ホームルーム中であるにも構わず話し出す二人にやんわりと注意するが、二人は完全に2人だけの世界に入ったようで先生の声も聞こえていない。
涙目になる先生を他の生徒が「どんまい…」と、慰めの目で見る。





雨に濡れた花道はどこか色っぽい。
髪からポタポタと雫を垂らし、それがスッと首筋をつたう。

犬のようにからだを振るう花道に洋平はハハッと笑う。


「たっく…仕方ねーな」



目尻を下げ鞄からタオルを出すと花道の頭にふわっとかけ、優しく拭き出した。


「洋平!せっかく髪セットしたのに…!」

「でもこのままにしとくわけにはいかねーだろ?風邪引くぞ?後でまたセットしてるから。頭冷したらダメだ」


優しい表情を浮かべる洋平の顔がちょうど見える女生徒は思わず顔を赤らめる。
花道のことがいとおしくて仕方がないという思いがひしひしと伝わってきて見ている方が照れてしまう


ホームルーム中、二人の世界に入っている洋平と花道
そんな二人を見せつけられた生徒と先生の気持ちは見事に一致していた。

皆心の中で叫んだのだった






ーーー他所でやれや!!!ーーー




END.


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