「あぁ〜もうかんべんーっであります」
ケロロはそう愚痴ると、持っていた鉛筆を力無く机の上に放り投げた。
今ケロロは、軍から出された宿題に取り掛かっている最中。
それも、何時もの如く提出期限前日に……
「ねぇ〜クルル〜」
その宿題から逃げるように、後ろでパソコンをしているクルルの背中にしがみつく………が、
「…………………。」
「……………あり?」
返事がない
クルルはケロロの方を振り返ることも、パソコンの上を滑る手を止めることもせず、ただ鬱陶しそうにケロロの手を振り払うだけ。
それが寂しくてクルルの腰に腕を回しぎゅ〜っと甘えて見せる。
「ねぇ、クルルー」
「…………」
「ねぇってばー」
「…………」
しかし相変わらずクルルからの反応はなく、帰ってくるのはカタカタというクルルが打つパソコンのタイピングの音だけ。
クルルが全く反応しないことに少しムッとして、こちらに向けられたクルルの細い背中にツツーッと指を走らせてみる。
「〜〜〜ッ!!//」
するとビクリと身体をふるわせ振り向き様に恨みがましい目を向け「…………あぁ〜?」と、やっと返してくれたのは不機嫌そうな声。
…でも、やっと反応してくれた
「クールル〜かまって欲しいであります〜」
彼の細い背中に頬を擦りつけて甘える。
…が、当然黄色い恋人の反応は冷たく……
「ククーッ!そんな暇ねぇだろ?」
「うぎっ!今は休憩時間でありますよー」
「よく言うぜぇ休憩する暇もないくらい宿題が残ってるんだろ〜が」
「うぅ…」
彼は少しもケロロを甘えさせようとはせず、突き放すような言葉しかかけない。
「あ〜…あと手伝わね〜からな。隊長がんばってーククーッ!」
ケロロの宿題の手伝いをすること、甘やかすことはギロロによって各隊員が禁じられている。
ケロロもそれは分かってたが、せめて恋人であるクルルには優しい言葉をかけてもらいたかった。
まぁそれは、クルルの性格を考えると無理な願いではあるが…
クルルの変わらない冷たさに頬を膨らませながらも、彼に絡むことはやめない。
「ねぇ〜クルルってばぁー」
「…………。」
「聞いてるー?」
「………。」
クルルは最早相手にしていられないといったようにケロロを無視。
それでもケロロは諦めることはなく…
「−んじゃ、癒しだけでも…」
そう言って、いそいそとクルルの膝に頭を乗せてごろんと横になった。
クルルはそれを怒ったように上から睨む。
「……おい」
「これくらい良いじゃん」
眉間のしわを深くして明らかな拒否を示していたクルルだったが、
ケロロの子供のような笑顔を見て、とうとう根負けした。
ケロロの笑顔は母性本能を擽る何かがあるのか、いつもクルルはそれに負けてつい甘えさせたくなってしまうのだ。
「…チッ、膝枕なんて…ガキじゃあるまいし
…今回だけだぜ〜?」
嫌味を言いながらも、自然とクルルの手はケロロの柔らかい髪を優しくすいていた。
少しくすぐったくて心地いいクルルの膝枕。
「気持ちいいであります……。」
珍しく甘えさせて貰えていることに驚きながらも、
ケロロは嬉しそうな顔をしてゆっくり瞼を閉じた。
・・・・・・・
そのままうっかり寝てしまい、宿題の期限を守れなかったケロロは、軍に呼び出されて大説教を食らった。
その為、軍からの侵略援助金は少なく
それからというもの、クルルに膝枕をさせて貰えることは一度もなかったという…
END.