「……それで、クルル曹長のグッズは人気がないみたいです」


モアのその言葉に、ケロロはそろそろとクルルの様子を見る。

案の定、そこにあったのは、前回と同じように恨みのこもった手つきで貰ったお便りを針でプスプス刺すクルルの落ち込んだ姿であった………





ケロロ達の故郷、ケロン星ではペコポン征服を行っているケロロ小隊はとても人気があり、グッズ化などもされている。
しかし、その中でクルルは陰気な性格のせいかケロン星の子供たちから人気がない。
そのため、クルルのグッズだけ大量に売れ残っていたりする……





会議が終わり小隊の皆がゾロゾロと帰っていく中、ケロロは売れ残っているというクルルの人形を片手にクルルに近寄り声をかけた。


「くっ、クールルー?そんなに気にする必要はないでありますよー?そんな手紙はほんの一部の人の意見でありますよー」

励ましの言葉をかける……が、じとりとうらめしそうな目を向けられる。

「クーックックック〜!だが俺を隊から外せだなんて内容の手紙が来ていることは事実。流石の俺様も落ち込むぜぇ〜」



…Sは打たれ弱いって本当なんでありますな…



「ね、クルル〜」


チラリと視線だけを寄越すクルルに思わず苦笑しながら、手に持ったクルルの人形を見せる。
それがどーした、と目で問うクルルににっこりと笑いかけ、そのまま人形にチュッとキスをしてみせた。



「な………っ!!」



驚いて口をあんぐりと開けてこちらを見上げるクルルにイタズラっぽく笑いかけると、ケロロは視線をクルルに合わせたまま愛おしそうに人形の口に口付けを落としていく。



「……………っ!」



次々と人形に落とされていく優しいキス、
まるで自分がキスされているようなむず痒い感覚に、クルルの顔はじわじわと赤くなっていった。
ケロロが更に人形の口元をぺろりと舐めて見せると、そこでクルルはハッとしたように慌ててケロロの手から人形を奪い取った。



「〜〜〜っ、何しやがんだよ…!」




顔を真っ赤にしながら睨むクルルを、ケロロは優しい目で見つめにっこりとした。


「確かにグッズが売れなかったり、こんな手紙を送ってくるようなクルルの魅力を分かってくれない人がいたりしているけどさ、我輩はクルルのことが大好きでありますよ?我輩がクルルのことを認めているであります。それじゃだめ?」

「…その他大勢の意見よりも自分1人の愛があればそれで良いだろって言いたいのかよ…」

「うん」

「それで俺は満足するだろうと?」

「うん」

「…………っ、」




思い上がるな、とクルルは怒ろうとした。そんな言葉でホイホイと立ち直る程自分は単純な奴ではない、とそっぽ向いてやりたかった。
しかし、そのケロロの、思い上がった、単純な、言葉で…先ほどまでひんやりとしていたクルルの胸はじわじわとあたたかくなっていた。




ーー気にくわない。ケロロの行動で自分のペースが惑わされるのも、ケロロの言葉1つで自分の気持ちが一喜一憂するのも。
だが、それをどこか心地よく感じている自分が確かにあった。




ケロロに顔を向けるとにっこり笑いかけられた。
それにチッと舌打ちすると、逆に機嫌良く笑われる。


「ゲ〜ロゲロゲロ! どうやらいつもの調子を取り戻したようでありますなー」

「クーックックック〜! 余計なお世話だっつーの」

「ゲロゲロ〜我輩かわいいクルルを放っておくことなんてできないでありますからな〜」

「〜〜っ! いちいちウルセーよ!! 」




真っ赤になって反抗するクルルを楽しそうに虐めるケロロ。
だが、クルルもやられっぱなしでは気が済まない。


クルルはゲロゲロと笑うケロロの胸元に手を伸ばし、自分の方へグイっと引き寄せた。


「わわ!ちょっ!!」

バランスを崩し、よろめくケロロ。クルルはそのまま顔を寄せにんまりと笑うとケロロの唇に深く口付けた。


思わず固まってギョッとした顔のケロロを満足げに見ると、最後にぺろりと唇を舐めてするりと離れた。
そして、にやりと笑う。


「あんな人形にキスされるだけじゃ物足りねーッスよ、たーいちょ」



してやったりとニヤリと笑いながら捨て台詞を吐くと、固まったままのケロロをそのままに、クルルは上機嫌でラボに帰って行ったのだった。












「元気になったのは良かったでありますが、あのまま放置だなんて…お預けを食らった気分であります……っ!」




END.


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