「万斉先輩!来週はハロウィンッスね!」


また子は嬉々としながら隣でギターを弾く万斉に声をかける…が

万斉は手を止めると冷めた目でまた子を見る




「ハロウィン?それが何か?」

「むきっ!アンタにそんな態度取られるのって何かムカツクッス!」

「そんなこと言われても…だいたい今までハロウィンの日に何か特別なことをした覚えはないでござるが…」

「だからこそッスよ!今年は鬼兵隊皆で仮装パーティをしたいんス!!」



意気揚々と語るまた子だが、相変わらず万斉の反応は悪く…

「却下」


と、提案をばっさり切られた。



「はあぁぁぁあっ?!何で!?」

「拙者達は、そんなイベント等するような餓鬼ではござらぬ。だいたい晋助が仮装なんてするわけがないでござろう…ということで却下」


万斉はヤレヤレと首を振ると、またギターに向かった。



「…本当にそれで良いンスか?」

「?」

「もう一度考え直してみて下さい、仮装大会ッスよ?仮装イコール違う意味にも取れると思うんスけど」



そう言ってニヤリと笑うまた子を不思議そうに見ていた万斉だが、彼女の意図に気付き顔をパッと輝かせる。



「………はっ!…仮装……コスプレ……!!」

「ふふふ…やっと気が付いたんスね?そう!仮装パーティを開くことによって晋助様のコスプレ姿を見るのが真の目的ッス!!」

「また子殿…お主天才でござるか?」



万斉が目をキラキラとさせてまた子を見ると、彼女は勝ち誇った顔をして問う。




「じゃあ…ハロウィンの日は……?」

「仮装パーティでござるぅぅぅう!!!」

「ふっ決定ッスね」






早速万斉はパーティーの許可をもらう為、高杉の部屋へと向かった。


ハロウィンの日に仮装パーティーを行いたいと告げると高杉はクツクツと笑い「ガキか」と言う。



「…だが、拙者等はいつ命を落とすか分からぬ身。だからこそ、たまにはこのような催しを行うのも良いではござらぬか」


…と、最もらしいことを真顔で言い高杉の顔色をそっと窺う。



「……ま、良いんじゃね」



元々派手なことが好きな高杉からは、あっさりと許可が出た。
取り合えずパーティーの許可が出たことに安堵したがここからが本番だと、気を引き締める。



「そのパーティーでござるが…全員参加でござる。」

「あぁ…俺も顔を出す」

「…で、全員強制的に仮装するように決めてある」



その言葉で高杉が纏う空気がガラリと険悪なものに変わる。



「………ほぉ…、で?」

「だから、晋助も勿論コスプ……仮装するようになるでござるな。」

「……………。」

「…だから、晋助も勿論コスプ……仮装するようになるでござるな。」

「2度綺麗に言い直す必要はねーよ」

「いやー晋助が無反応だから。」

「……要するにお前は俺にコスプレをさせたい訳だな……て、『何故バレた』みたいな顔すんな。お前が言ったんだろーが、2度も。」

「まぁ、ぶっちゃけそういうことでござる。」



あっさりと開き直った万斉を射るような目で見ていた高杉だが、しばらく黙ると諦めたようにふうっと息を吐き頷いた。



「仕方ねぇな…分かったよ」

「え?」



まさか許可が出るとは思っていなかった万斉は一瞬ポカンとした。



「晋助…今何て……?」

「俺もハロウィンの仮装をしてパーティーに参加するって言ってんだ」

「し…晋助ぇぇっ!!」

「ちょっウザい、分かったんなら帰れ。早く出ていかねーとさっきの言葉取り消すぞ」



それでも許可が出たことに首を傾げた万斉だが、高杉の気が変わらぬ内にと、衣装はまた子と用意をすることを告げサッサッと退出した。





高杉からの許可が出たことをまた子に話すと、彼女も同じように首を傾げた。



「珍しいッスねー晋助様嫌がると思ったんスけど…まぁ、パーティー出来るなら良いッス!」

「そうでござるな。」

「それよりも!許可が出たんだから、晋助様の衣装を考えるッス!何が良いッスかね〜?」

「断固魔女っ子!!」

「…………。」

「黒いミニドレス…晋助の白くて華奢な身体にはきっとピッタリでござるよ〜」

「…………。」



また子の顔が歪んで行くのにも関わらず、万斉の妄想はどんどん進んで行く。



「それでー恥ずかし気に顔を赤らめながらスカートの裾を必死に押さえる晋助……」

「うあああああああああっ!!サブイボ!!いや、確かにそうなんスけど!勿論晋助様なら何でも着こなせそうなんスけど!!アンタが言うと…ああーっ鳥肌ヤバイイイイイ!!」

「はぁ〜。相変わらずまた子殿は失敬でござるな。」

「これが普通の反応ッスから!!」

「んーでもまた子殿は晋助の魔女コス見たくないんでござるか?」

「…そりゃあ…まぁ、見たくないって言ったら嘘になりますけど…」

「じゃあ、魔女っ子で決定でござる!」

「…………。」

「仕方ないでござるな…また子殿と晋助同じ魔女っ子衣装。これでオッケーでござろう?」

「いや、そういう問題じゃ…」



…と言いかけたが、ふと愛しの晋助様と自分がお揃いの服を着ている姿を頭に思い浮かべる。同じ格好をした2人…何かペアルック着たカップルのようで、逆にそれも良いかなと考え直す。



「………いっ良いッスよ!」

「よし!それじゃあ準備に取りかかるでござる!」








そして当日

2人はいそいそと、魔女っ子衣装を高杉に渡しに行った。



「し〜んすけっ♪衣装持ってきたでござるよー」

「あぁ。」



万斉から受け取った衣装を見て、高杉が固まる。



「……何だコレは…」

「魔女っ子の衣装でござる。いやー晋助には絶対に似合うと思うでござるよ〜。」

「…とりあえず万斉…」

「何でござるか…ぎゃぶぅぅっ!!」

「キモい。一発殴らせろ。」

「殴らせろって今殴った…って…ぐふぁっ!!もう一発でござるか!!」



一先ず万斉を殴って落ち着いた高杉は、もう一度まじまじと用意された衣装を見る。




「…何なんだ、このフリフリのスカートは…」

「可愛いでござろう?そのスカートから覗く晋助の生足……ハァハァ」

「………。もうイヤだお前……おい来島ぁ、お前も黙ってないでこのバカに何か言え。」




キャイキャイと気持ちの悪い発言を繰り返す万斉に呆れ、先程から黙っているまた子へ顔を向けると、彼女も期待したようなキラキラした顔で高杉を見つめていた。



「……来島…」

「……はっ!あっ、えっと!!晋助様は何でも似合うと思うッス!!」



明らかに話を聞いてない。
それ以前に、彼女も自分に魔女のコスプレをさせようとしていたのかと溜め息をつく。



「ふふふ。もう諦めるでござるよ、晋助。仮装をしないとパーティーには参加できない決まりでござるよ?」


にやにや笑う万斉をじとりと睨んでいたが、はぁとまた諦めたようにため息をついた。


「…分かった…元々そう聞いてたしな。ちゃんと仮装して行く。」



その答えを待っていたと、万斉とまた子はお互い顔を見合せにんまりした。
そして、それ以上は聞く耳を持たないと言った様に脱兎の如く部屋から出ていった。









ーーパーティー会場





「で!!何でアンタも魔女っ子になってんスかァァ!」



可愛らしい黒いドレスを着たまた子の目の前には、彼女と全く同じ格好をした万斉が。



「ふん。2人だけ同じ格好になどさせるわけがないでござる。拙者も晋助とお揃いしたかったの!」

「キメェェっ!!これじゃあ、先輩と私がカップルみたいじゃないスか!今直ぐ脱ぐッス!」

「いやでござるぅぅ!」



2人が言い合っていると後ろから高杉の声が…



「おいおい…せっかくのパーティーで何喧嘩なんてしてやがる」



高杉の声でぴたりと喧嘩は止み、2人は目をキラキラとさせて勢い良く高杉の方へ振り返る。


「「魔女っ子…………っ」」



…がいるはずが、そこにはいつもと変わらぬ服装の高杉が。



「晋助ぇぇぇっっ!?何で着てないのぉぉっ!!?
拙者ちゃんと衣装用意して渡したじゃん!!」

「俺が魔女のコスプレなんざする訳ねーだろ」

「でも晋助さま!!パーティーに参加するには必ず仮装するようにって……っ!」


また子が不満気に叫ぶが


「だから仮装してるだろ?」

とサラッと言い返される。




「??」

「これで包帯人間になってるだろ?」


トントンと、自分の顔に巻き付いたお馴染みの包帯を指さしてニヤリと笑う。




「まさか…っ最初からそのつもりで?」

「ふん。当たり前だろ?」

「そっそんなの仮装って認めないでござる!」

「良いかどうかを決めるのは、このパーティーの発案者の来島だ。」



また子の方を見ると不満気な顔をしている。



「来島…。」

「晋助様…申し訳ないんスけど、私も万斉先輩と同じ…」

「来島。」




憧れの高杉にじっと真っ直ぐ見つめられ、また子の不満そうな顔がみるみる赤くなっていく。
そして……

「素敵ッス…」



完全に惚けた顔になったまた子に高杉はニヤリと笑い、彼女の腰にスルリと腕を回してもう一度問う。



「俺がこの格好だとパーティーには参加できないのか?」

「いいえ!晋助様ならどんなお姿でも大丈夫ッス!!」

「それはよかった。」

「ちょっ!また子殿おおお!?」



高杉に見つめられてあっさり裏切ったまた子に驚嘆の声をあげる万斉を高杉が勝ち誇った顔で見る。



「…だとよ。」

「あっ晋助様!あっちにおいしそうな料理があるっすよ!!」

「おう。行くか。」

「はいッス!」







「魔女っ子…」


にぎやかなパーティーの中、万斉は悲しそうにぽつんと呟いたのだった。






End.


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