スパァンッ!



「晋助ぇぇ!拙者にチョコをおくれでござる!」

「はぁ?」




いきなり部屋の襖を勢い良く開けると同時に叫ぶ万斉を高杉はポカンとした顔で見る。



「何意味の分からないこと言ってやがる…つーか勝手に部屋入ってくんな」

「だって、今日はバレンタインデーでござるよ?もちろん恋人の拙者にチョコを用意してくれているのでござろう?」



嬉しそうに擦り寄ってくる恋人を高杉は鬱陶しそうに手で振り払う。



「…んな物用意してねぇよ。」

「えぇーっ!?」



万斉はあからさまにショックを受けた顔で、よろよろと後退り「期待していたのに…」と呟く。



「何で男の俺がテメェなんざにチョコやらなきゃいけねぇんだ…それよりお前が寄越せ、貰ってやる。」

「何て女王様な性格!でも残念ながら、拙者からプレゼントするのはホワイトデーでござるからー」


「万斉…お前ぇ、日を重ねる毎にウザさが倍増していってる気がする」

「ふふふ…晋助は日を重ねる毎に可愛さが倍増していってるでござるよ」

「……うぜぇ」



皮肉の返しにさらりと可愛い等と言われて思わず顔を赤くする。



「クスクス。晋助赤くなって可愛いでござるなぁ」

「…うっせぇっ」


バキッ


「へぶっ!!照れ隠しに殴るの止めて!」

「照れ隠しじゃねーよっ」

「…まぁ、晋助のツンデレが見れたから良しとするでござる」

「チッ…」



殴られた頬を擦りながら、ふと何かを思い付いた万斉は満面の笑みを浮かべて「じゃあ…」と提案する。



「晋助がチョコ用意してないんだったら拙者から1つ提案が…」

「あん?何だよ?」

「晋助の全身にチョコを塗って『俺がバレンタインチョコだ。俺を食べて万斉(ハート)』って言って欲しいでござる」



「帰れ」



「だって!全裸にチョコって男のロマンでござるよ?!」

「お前の変態的趣味を俺に押し付けようとするな」

「晋助の身体の隅々まで拙者が舐めてあげるから!」

「何が舐めてあげるだ…しねぇっつってんだろ」

「…そんな態度ばかりとられると、拙者本当に晋助の恋人なのかたまに不安になるでござる…」



高杉の冷たい返しに万斉はがっくり肩を落とした。
いつもは鬱陶しい程絡んでくる彼が珍しく落ち込んでいるのを見て、流石の高杉も少し言い過ぎたと思ったのかハァとため息をつく。
机の上を何やらゴソゴソと漁り、万斉の目の前にグイッと手を突き出す。



「たっく…仕方ねぇな、手出せ」



すると、今まで落ち込んでいた万斉はパァッと顔を輝かせて期待の目を向ける。



「はいっ!!」



パラパラ


…………………。


手の上に落とされた物を見た万斉の顔が一気に死んだような表情になる。




「…………。ねぇねぇ晋助、これは何でござるか?」


「かつおぶし。」


「いやいや!拙者チョコをくれって言ったのに何故かつおぶし!?」

「あ?俺からの愛を受け取れないって言うのか?」

「愛軽っ!」

「てめぇ…人から物貰っておいて何だその態度はよぉ」


バキッ


「あいだぁっ!今のは理不尽すぎでござる!もーっ拙者これは怒るべきだよね?!あ、でもツンデレ晋助の愛情表現だから…」



1人ぶつぶつ言う万斉に面倒くさそうに「愛情表現、愛情表現」と適当に相づちを打つ。



「……………………。」


恨めしそうに見つめるが、高杉は万斉の相手に飽きたのか新聞を広げ始めた。

これ程せがんでも高杉は恋人の自分に全くチョコを渡す気配がない。
自称しつこさが取り柄の万斉も流石にチョコを貰うことを諦めた。



「〜っもう良いでござるぅ!拙者、仕事あるから部屋に戻る!」

「…おう」



肩を落としてしょんぼり自室へ帰ろうとする万斉に高杉が思い出したように声をかけた。



「おい、万斉」

「…なんでござるか?」



悲しそうな顔をして振り返った万斉の顔に思いっきり何かが投げ付けられる。


パァン!!


「うぶふぅっ!」



「いったぁぁぁっ!!何するんでござるか晋助ぇぇ!」

「やる」

「何を…」



自分の顔に投げ付けられた物を拾ってみると、それはピンクのリボンが施された赤い箱。
万斉は驚いて高杉を見るが、彼の表情からは何も読み取れない。
今までの流れから中身はあまり期待は出来ないが、希望を捨てきることがない。
おそるおそる開けた箱の中身は……



「………チョコ?」



まさか、わざわざ買いに行ってくれているとは思っていなかった。
自分の望んでいたものを与えられた万斉だが、未だ信じられないというように高杉を見つめる。

高杉は新聞から目を上げずにモゴモゴと説明する。



「…昨日町をぶらついた時にたくさん買って余ったんだよ……テメェの為に買った訳じゃねぇから、勘違いすんなよ」



そう言って目を反らす彼の顔は、少し赤い。


こっ…これぞまさしくツンツンデレ…!
感動にフルフルと身体を震わす万斉に高杉は顔を真っ赤にする。



「チョコやったんだからサッサと出ていけ!//仕事あるんだろっ」



だが、こんな可愛い恋人を目の前にして仕事どころではない。
顔を上げた万斉の目がギラリと光る。


ガバッ


「………っ!もう我慢出来ないでござるぅぅ!!晋助のツンツンデレめぇぇ!!」

「ぎゃあああああ!盛んじゃねぇっクソグラサンんんん!!」



END.


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