やぁ、皆さんごきげんよう!
皆のアイドル河上万斉でござるよ〜!
いきなりだが今日拙者はやり遂げようと思っていることがある。
それは…昨日TSUT○YAで借りた、とある恋愛映画でやっていたポケット内手繋ぎを恋人とすることでござる。
恋人?あぁ、勿論晋助のことでござるよ〜ふふふ
えっ?晋助って男じゃないかだと?
シャラーップ!!
晋助がどんなに可愛いのか知らぬのだな?奴の可愛さは男だとか女だとか、性別何てものを越えている。
晋助は裏番だとか呼ばれてはいるが本当はすっごく可愛い子猫ちゃんなのでござるよ!

……って、あれ?晋助が拙者のことをゴミ屑を見る様な目で見ているのだが……?



「何1人でブツブツ言ってんだ。気持ちワリィ…」



若干引いたような表情でこちらを見ている男。
そう!これが我が恋人、晋助でござるっ…………って、え?





「……今の声に出ていたでござるか?」

「TSUT○YAがどうの、俺がどうのって…」

「そんなに声に出ていたのでござるか…恥ずかしいでござる!きゃっ!」

「うざっ!」



そんな晋助の愛情の裏返しの可愛い暴言とともにホームルーム終わりの号令。




きりーつ、きをつけー、れい。

さよなら〜






「ささ!帰るでござるよ!晋助!」

「…おう。」



ノリノリの拙者を晋助は不思議そうに見ながらも素直に頷いて鞄を持ち一緒に教室を出ていった。






いつも帰りは拙者のバイクの後ろに晋助を乗せて帰っている。しかし、今日はバイクは家に置いてきた。バイクではなく、歩きでなければポケット内手繋ぎは実行出来ない!これも計画の為でござる!それを悟られないようにさらりと晋助に詫びる。



「晋助、すまないが…バイクが壊れているから今日の帰りは歩きでござる」

「そうか」





どうやら晋助は拙者のイチャイチャ大作戦には気が付いていないようだ。これならこのまま上手く行くかもしれない。ほくほくとしながら早速声をかけようとした。
…………が、



「おーい沖田ぁチャリ後ろ乗せてくれ」

「って!ええええええぇぇっ!!!?」



ちょうど前を歩く沖田にそんなことを頼む晋助に思わず叫ぶ。


「え?え?!晋助!?」

「歩くの面倒くせぇ…」

「そんな!!」



このままでは、折角の計画も駄目になり、晋助と手を繋ぐという目的も果たせなくなる。それだけは避けたいと拙者は必死に晋助を説得した。


「ね!ね!晋助?たまには歩くのも健康的で良いではござらぬか?!」

「いや、めんどくさい」

「めんどくさい!めんどくさい!って!晋助をそんなめんどくさい星人に育てた覚えはないでござるよ!」

「…………。」

「ああああああ!!黙って行こうとしないでほしいでござる!帰りに晋助の好きな肉まん買ってあげるから! 」

「……………………。」

「分かった!!もう1品!晋助の好きなものを買ってあげるから!!!」



そこでやっと、晋助は折れてくれて声をかけた沖田に断りを入れ「おら、帰るぞ」と先を歩いて行った。拙者も慌ててそれに続く。






さて、今日は風が冷たく少し肌寒い。これは、手を繋ぐのもポケット内手繋ぎをするのも簡単かもしれないと内心ほくそ笑む。
チラリと晋助の手を見ると寒さで少し赤くなっていた。
……チャンスでござる。


「晋助、手が赤くなっているでござる。霜焼けになっちゃうでござるよ。」


そう言って晋助の冷たい手を握ろうとした。
…が、スルリと避けられる。


「…………。」

「…………。」


あれ?おかしいでござるな、ともう一度手を伸ばしてみる。
すると、やはりサッと避けられる。




あっ……と、そこで気が付いた。
そもそも日頃から晋助は手をつないでくれないんだったあああああああ!!!
手を繋いでくれなかったら!ポケット内手繋ぎなんてそもそもできないでござる!!
何だか嫌悪感丸出しの顔で晋助が睨んで来ているような気がするが、晋助はシャイなアンチキショーな可愛子ちゃんだから外で手を繋いでくれるなんて恥ずかしくて出来ないんでござろうな……
いやしかしここで諦めたらチャンスはもう二度と来ないと考えた方がいい…!
こうなったら頼み込んでみるしかない!
例えかっこ悪くても!(誰でござるか!普段からカッコ悪いって言ったのは!)ここで、諦めたら男が廃るでござる!!





「晋助……」

「…………あ?」

「拙者、ただ晋助と手を繋ぎたかったのでござるよ。」

「……。」

「だから、バイクも置いてきちゃったのでござる。」

黙って聞く晋助を見つめながら、思わず自分のカッコ悪さにへにゃんと眉を下げて笑う。

「呆れたでござるか?女々しい考えで」


「……………っ、」

それに晋助はじわじわと顔を赤くした。




そう言えば…何故か困った様に笑ったり、真面目に話しかけたりすると晋助は赤くなる。
また子に聞くと鬱陶しそうに「ギャップッスよ、ギャップ」と言われた。
しかし、そのギャップというのが自分ではよく分からない。拙者自身はいつも同じスタンスを貫いているつもりなのだが……、とりあえず赤くなっている晋助激萌え。



「晋助?」


声をかけると、晋助はチッと舌打ちする。
そして、自分から乱暴に拙者の手を握った。
……自分から!!?
なななななんと!?晋助が自分から拙者と手を繋いでくれた!!

じーんと、感激していると晋助はそのまま「あったけぇ…」と呟いて歩き出す。





……っ、ああああ!!何なのでござるか!?この可愛い生き物は!!
思わず叫びたくなったが、それをすると今までの経験上きっと晋助はドン引きして手を離してしまうだろうから叫びたい気持ちを押さえ黙ってついていく。


あとは、この手をそのまま自分のポケットの中に入れるだけ。
にこにこと笑い「寒いでござるから」と、そのまま繋いだ手をポケットへと導いた。

これで念願のポケット内手繋ぎができるでござる……!
喜びに満ちた満面の笑みで心の中でガッツポーズを思いっきりしようとしていた、、、が、




………みしっ





「あれ?」

手を入れようとしたポケットには僅か指先しか入らない。それに首を傾げながらもう一度試してみる。



みしっ



ぎゅっと押し込んでみるが全然ポケットに手が入らない。


「あれぇえええええ?!!」



繋いだ手を入れようとした制服のポケットは二人の手を入れるには小さ過ぎて全く入りきらなかったのだ。
そこで、ハッと気が付く。


「しまったあああああ!!!あの映画では、コートを着ていたでごさる!!」

「ああ…成る程な……映画で見たシーンを実践したくなったのか」



折角色々計画して、晋助を説得して手を繋ぐ所まで行けたのに……
思わず力が抜けへにゃへにゃと足元から崩れ落ちた。


「もうだめだ…拙者の願いは叶わずじまいでござる………晋助がまた一緒に歩いて帰ってくれるな
んて…ましてや手を繋いでくれるなんて今後望みはないでござるよ……」

「…………。」



だが、そもそもポケットに手が入らない時点で仕方がない…諦めるしかない。
ションボリしながらも、帰ろうと晋助の顔を見上げると何だか苦い顔をしている晋助と目が合う。


「……晋助?」


呼び掛けると、晋助はんん〜っと唸ると頭をガシガシと掻きうん、と頷く。そして、何か決心したようにじっと拙者の目をチラリと見ると渋々と言ったように口を開いた。


「…まぁ、俺の気が変わってなかったらまたやってやってもいい」


え?
……ええ!?


「ほっ!本当でござるか!?」


「ただし、コートを着るときまでお預けだ。」



そう言ってこちらに背を向ける晋助の耳は真っ赤だった。
いつもは照れ隠しで、冷たい態度をとる晋助。だが、こうしてたまに見せてくれる恋人としての優しさが可愛くて仕方がない。
思わず晋助えええええ!と叫びながら飛び付いた拙者は案の定スーパーデレタイムが終了した晋助に蹴り飛ばされたのだった。






次の日早速コートを着てきた万斉は、高杉に思いっきり殴られたが、帰り道にはとても嬉しそうな笑顔を浮かべていたとかいなかったとか………





END.


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