第捨伍話-3

 次に目を開けた時、私はあの交差点に居た。
 2010年2月12日、金曜日。真冬を少し過ぎてはいるけれど、まだ寒い季節。
 こぐまやで買ったお気に入りのカジュアル着物に、花飾り付きのニット帽とマフラーとアームウォーマー。中にはしっかりとキャミソールとTシャツとババシャツを着こんでるからあったかだ。そして足元はレギパンとブーツで完全防備。
 目の前の信号は赤だ止まれと光っており、その下の横断歩道を挟んだ対岸に、少女と見まごうばかりの美しい少年が立っていた。
 紺色のコートの下に黒い学ラン。栗色の髪の少女と見まごうばかりの美しい少年は自分の胸ポケットを探り、ズボンやコートのポケットへと手に持つ鞄の中も確認して顔を青くして身体を反転させた。
 出会った事がない筈の彼の名を、私は知っている。
 紫藤海美。私の一つ年下で、あんな風に不運な所があるけれど、見た目の割には男前で割と毒を吐ける少年だ。
 また覚えているのは私だけなのだろうかと思いながら、信号が青へと変わるのを見上げた。
 これを渡れば、あの時のように車に引かれるかもしれない。だけど、どうやら何も思い出していなさそうな海美が危ないのが分かっているのに、一人逃げられるほど私は冷たい人間ではないつもりだ。
 私は歩道を渡るべく一歩踏み出した。
 だけど誰かに手を引っ張られて、後ろ向きに身体がぐらりと揺らいだ。
「なっ!?」
 驚く私の身体は誰かの身体にぶつかったのか倒れずに済んで、思わず瞬きした後、犯人の顔を見るべく顔を上げた。
 その時見えた顔は私の良く知っている顔だった。

 そこに居たのは―――

久々知兵助
鉢屋三郎
立花仙蔵

※分岐後には女体化とか年齢操作とか現パロとか様々な要素が含まれていますのでご注意を!

20110210 初稿
20221106 修正
    
res

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