上ノ島くんと明るい同級生の場合

※成長(+4年)

 忍たまとくのたまでは敷地が違うから、会う事は殆どなくて、精々食堂で見かけるお手伝いをしているくのたまの姿位だった。
 は組はよく一つ年上のくのたまに苛められているけど、僕らはそれほど多く苛められている訳ではないし、苛められていたとしても彼女たちを見かけることはあまりなかった。
 ただ嵌った罠とかがくのたまのなんだって後からわかるくらい。大体そんな感じ。
 でも上級生に上がってくるとくのたまとの合同授業が少しずつあって、少しずつ名前を覚えた。
 委員会活動は別々だし、基本的な生活が違う。だけど、たまにその姿を見ると胸が跳ねた。
 見あげていた視線が少しずつ一緒になってくるのが嬉しくて、食堂で会う度声を掛ける様になった。
 強いて言うならまだ顔見知りの部類だと思う。
 友達でもない、ただの同級生。それがふさわしいんだと思うけど、それでも僕のこの想いは本当だと思う。
 何しろ彼女を好きになってもう三年目を過ぎたのだから。
「おはよう、公子ちゃん」
「あ、おはよう。上ノ島くん今日も早いね!」
「公子ちゃんたちには負けるよ」
 朝早くから食堂の手伝いをするくのたまの朝は僕らよりももっと早い。
 昔は朝の手伝いまでしていなかったけど、食堂のおばちゃんも大分年を取ってきたからと手伝いを願い出るようになったのが二年前の話だ。
 それから僕は公子ちゃんに会えることを信じて毎朝早起きをする。
 数日置きだったら怪しまれるし、当番は固定されているけれど仲間内でよく変更する彼女たちの当番は中々読めない。だから毎朝早起きをする。
 同じクラスの佐吉とは逆の生活だよねって彦四郎には良く笑われるけど、いいじゃん!毎朝早起きって健康的じゃないか!
「あれ?今日は一人?」
「彦四郎は寝てるよ。昨日の夜学級委員長全員呼び出しだったらしくて」
「なんか鉢屋先輩が居た頃を思い出すとそんな風に思わないけど、学級委員長委員会って大変なんだね」
 当時鉢屋先輩が来ていた藍色を身に纏っているけど、あの鉢屋先輩の性格は今でも謎だ。
 あの人どうしてあんなんで学級委員長やってられたんだろう……天才だから?
 彦四郎未だに鉢屋先輩に追いつけないって悔しがってるけど、僕は鉢屋先輩の凄さが変装以外でいまいち理解できないままだ。
「うーん、どうだろう。また学園長先生の思い付きで何かあるのかもって思うと、あんまり……ね」
「そう?景品はうんざりするけど私面白い事好きだよ。楽しいじゃない!」
 はっきりと物を言う公子ちゃんに引きつりながらも、本当に楽しそうな顔をしている公子ちゃんの明るい笑顔に癒された。
 本当公子ちゃんってどうしてこんなに可愛いんだろう。
 背を追い抜いてから一層彼女が可愛くて仕方ないんだけど!
「公子ー、何時までも喋ってないで手伝ってよー」
 厨の奥から他のくのたまが公子ちゃんの名前を呼ぶ。
「あ、ごめんごめん!上ノ島くん、今日はどうする?」
「えっと、B定食で」
「はーい。ちょっと待っててねー」
 くるりと背を向けて小走りで奥へと向かう背を目で追いかけほうと小さく溜息を零す。
 人の目がある限られた時間だけの楽しみだけど、結構充実してる……かな。
 背は追いついても彼女のあのはっきりした物言いで告白して断られたら多分立ち直れない。
 と言う訳で、想いはまだまだ告げられそうにないけど……いつかは告白できると良いな。せめて卒業までには。



⇒あとがき
 志低いヘタレな一平ちゃん……でもぽにょぽにょしてる一平ちゃんも好き。
 でもそんな一平ちゃんとの話を考えたら変態な考えしか浮かばなかった私を誰か殴ってくれ。←
20110203 カズイ
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