喜三太と懐かれてる先輩の場合

 ※成長(+3年)

 二つ年下の後輩に蛞蝓が好きだと言うちょっと変わった少年がいた。
 別に蛞蝓はそこまで言うほど嫌いじゃないし、くのいちたるもの蛞蝓だって非常食だと思うし、蛞蝓はその少年とその友達以外には良く効く悪戯に使える。
 重ねて言うけど、別に蛞蝓はそこまで嫌いじゃない。
 でも、蛞蝓壷を抱えて歩くほど好きかと言われれば否と答える。
 あくまで蛞蝓は非常食であり、悪戯の道具である。好きなんてそんな馬鹿な……
「作兵衛、ちょっと助けて」
「なんだよ公子……ってまたか喜三太!」
「えへへ〜」
 腰に蛞蝓壷を抱え私の腰元に抱きつく少年―――基、山村喜三太。
 私の幼馴染である作兵衛の委員会の後輩である彼は何故か私に懐いている。
「公子に迷惑掛けんなって何回言ったらわかるんだよお前は……」
 がくりと項垂れる作兵衛に喜三太は首を傾げて「はにゃ?」と……呑気な笑顔は変わらない。
 これが出会った頃だったなら、腰元に張り付いて可愛いなあ……でもショタコン先輩がこっち睨んでるからそろそろ離せよ糞一年坊主って感じだった。
 でも三年も経てば流石の彼も身長が伸び、体格が追いついてきて重い。
 昔は容易に引きずれたはずの体格が、今は必至に引っ張ってようやく動く程度。そろそろ私無理かもしれない……
 偶然三年経っても相変わらずな迷子たちの捜索中だったのだろう作兵衛が近くを通らなかったら助けなんて呼べなかったかもしれない。
「程々にしとけよ」
「は〜い」
「そうね……ってちょっと待てー!作兵衛なんで助けてくれないのよ!!」
 いい加減重たいのよ!?
 そう思いながら訴えれば作兵衛は苦笑を浮かべた。
「いや、まあ……喜三太」
「はにゃ?」
「俺に言う前に公子に言えよ。お前も馬鹿だが公子も馬鹿だからな」
「ちょっと待てそれどういう意味だ!!」
「言葉通りだばーか。俺、三之助探してるから行くぞ」
「作兵衛この野郎ちょっと戻ってこーい!!!」
 あっさりと立ち去って行った幼馴染に私は地団駄を踏みみながら怒鳴った。
 なんて薄情な幼馴染なんだ!小さい頃は公子ちゃん公子ちゃん言って後ろを追いかけていたくせに男前気取るな畜生!!
「公子せんぱぁい」
 慕ったらずなとても四年生とは思えない甘えたな子どもっぽい声音に私は後ろを振り返る。
「……何」
 細い目が私を見つめ、でれっでれの笑顔に私は疲れを覚えた。
 変わらなさすぎるのもいかがなもんだろう。私の背を抜いている癖に子どもっぽい後輩は不意に顔を近づけ、軽くちゅっと言う音を立てて唇を吸った。
「?」
 ……吸った?
「えへへ、公子先輩可愛い〜」
 あまりにも変わらない態度に何があったかよくわからずに硬直していると、喜三太は私の身体を抱きしめ直し、頬擦りする。
「……今、接吻……」
「しました〜。だって公子先輩可愛いんだもーん」
 きゃーと照れる喜三太に私はぽかんと口を開いた。
「だもーんって……ええ!?」
「僕だって男の子なんですよ〜?こーんなに公子先輩大好きって態度で示してもわかってくれなくって寂しかったんです」
 言いながら段々としゅんとなっていった喜三太だけど、すぐにいつもの呑気な笑みを浮かべた。
「だからちゃんと言いますね?公子先輩だぁいすき!」
 えへへと照れたように笑う喜三太は一年生の頃と変わらず可愛くて、でもちゃんと男の子で……え?あ、あれ?
「公子先輩顔真っ赤ー。可愛い〜」
 うふふと笑う喜三太に抱きしめられているのが段々恥ずかしくなってきて私は両手で顔を覆った。
 なんだこの痒い感じ!



⇒あとがき
 作兵衛さん、後輩の愚痴と言う名の惚気と嫉妬に耐えかねて幼馴染を売りました。←
 喜三太も可愛いので大好きです。用具全員息子に欲しい(^p^)
20110203 カズイ
res

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