おっさんといじわるな先輩の場合

 小さな子どもに交じって背の高い大人が一人。
 それが先生じゃなくて生徒だって言うんだから笑い草だ。
 でも元プロの名は伊達じゃなくて、実力だけで言えば確かに六年生以上。
 何しろ武芸十八般の達人なんだからそうじゃなきゃ逆に可笑しい。
「ねえおっさん」
「誰がおっさんだ、粟生野」
「樋屋奇王丸って名前の後輩。後ちゃんと呼び捨てじゃなくて先輩ってつけてくださいおっさん」
「……………」
 不快そうに眉根を寄せる年上の後輩に私は笑みを向けた。
「おっさん膝固いよ」
「だったら頭を乗せるな」
 呆れた声が零れ落ち、私はにへらっと笑った。
「くのいちを目指すものがそんな笑みを浮かべるな。気色悪いぞ粟生野」
「いくら二年生がツンデレ学年だからっておっさんがそんな片鱗見せなくていいんだからね」
 そう言えば手刀が落ちてきて、慌てて避けた。
「もうおっさん酷いなあ」
「勝手に現れて勝手に膝枕して挙句文句を言う奴には言われたくないがな」
 そう言いながらこれで何度目の同じ応酬だろう。
 我ながら飽きもせず良くやる。
「いくら授業だろうと態々くのたまの術にかかるほど私は子どもではないし、掛かってやる気もない」
 くいっと持ち上げた眼鏡の奥の瞳が不安そうに揺れているのに私はくすりと笑った。
「おっさんの嘘つきー」
「煩い」
 ぷいっとそっぽを向いた奇王丸の耳が僅かに赤い。
「修行不足でしてよ?」
 わざとらしくそう言い、奇王丸の手を取り指を絡める。
「子どもじゃないなら……大人っぽい事する?」
 上目使いにそう問えば、一気に顔色が赤く染め代わり、私の手が勢いよく弾かれる。
「い、一々大人をからかうな!」
 立ち上がったかと思うと、奇王丸はずんずんと廊下を立ち去って行った。
 大の大人がこの反応。一体いかがなものだろう。
「おっさん可愛すぎる……っ」
 一人廊下で身悶えていると、委員会の後輩を呼びに来たらしい久々知に鉢合わせて趣味が悪いと蔑むような目で見られた。
 豆腐命のお前にだけは言われたくないわ!



⇒あとがき
 14歳に翻弄されるおっさんと、おっさんに身悶える14歳。
 一応奇王丸も忍たまだよねってことで書いてみましたが、奇王丸もツンデレでいいのかな?よくわからない。
20110129 カズイ
res

×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -