福富先輩と可愛い後輩の場合

※成長(+3年)

「福富先輩って不思議ですよね」
「んぐっ……何が?」
 ごくりと団子が胃袋の中へと消えていくのを見ながら私は湯呑を差し出した。
「どうぞ」
「ありがとう公子ちゃん」
「いえ」
「それで、なんだっけ?」
「男の人が一杯食べるって言うのは用具委員に入って良くわかったんですけど、福富先輩はその更に上を行くなあって」
 目の前に軽く積まれた皿をじっと見つめていると福富先輩は首を傾げた。
「僕はこれが普通だからなぁ」
 のんびりした声音でそう言うと、福富先輩は空を見上げながら皿の上に残った櫛を置いた。
「まあ外で一緒にお団子食べるの初めてだもんね」
 ふにゃりと笑う福富先輩に釣られるように私も笑みを浮かべた。
「平太は元々小食であんまり食べないけど喜三太も甘いもの好きだから一杯食べるよ」
「なんかそんな感じです」
 先日の委員会の最中に猫に囲まれて猫語なるものを操っていた山村先輩を思い出しくすくすと笑った。
 下坂部先輩は猫語って何だろ?って首を傾げながら私と一緒に猫に囲まれる山村先輩を見守っていた。
 多分富松先輩が怒らなかったら私たち三人はあのまま山村先輩を見守っていたことだろう。
 それ位和む光景だったのだから仕方ないと思う。
「公子ちゃんはそれだけで足りた?」
「はい。満足です」
 一つだけの空になったお皿を見下ろし、心配そうに福富先輩は首を傾げる。
 福富先輩は下坂部先輩を小食だと言うけど、下坂部先輩だって私からすれば結構食べる方だと思う。
 私はむしろ食べきれないからいつもおばちゃんにご飯を少し減らしてもらってどうにか完食しているようなものだ。
 用具委員で席を囲んで食べるときは福富先輩がいつも足りなさそうにしているから小鉢を一つ渡して少し楽をさせてもらったりしているのに気付いていなかったんだろうか。
 そうだとしたら少し残念かもしれない。私ばっかり福富先輩を見ているって言う事だから。
「公子ちゃん、どうしたの?」
 心配そうにのぞきこんできた福富先輩に、私は首をぶんぶんと横に振った。
「な、なんでもないです!」
 か、顔が近かった!
 ドキドキする胸を押さえ、私ははっと我に返って懐からお財布を取り出した。
「お、お金……」
「いいよ。僕が誘ったんだから僕が払うよ」
 にこりと微笑んで福富先輩はお財布を戻す様に私の手に触れた。
 そっと押す様に押されるとこの胸のドキドキが気付かれてしまうのではないかと思ってますますドキドキしてしまう。
 ああもうどうしたらいいんだろうっ。
「お姉さん、お勘定ここに置いてくね」
「はーい。ありがとうございましたー」
 お団子屋のお姉さんが慌てて奥から出てくるのを横目に福富先輩は立ち上がった。
「はい」
「あ、えっと……」
 差し出された手に恐る恐る手を伸ばせば福富先輩の大きな手が私の小さな手を優しく包み込む。
「それじゃあ行こうか」
「は、い……」
 赤くなってしまった顔を押さえながら歩き出す。
 歩幅は絶対福富先輩が四年生の先輩の中では一番なのにそんな風に感じさせないくらい私に合わせてくれる歩幅が嬉しくて、ちょっとだけ勇気を出して福富先輩に寄り添ってみた。
「えへへ、公子ちゃんから寄ってくれるなんて嬉しいな」
 よしよしと頭を撫でてくれる手に私は目を細めた。
 今は後輩としか見られていなくても、それでもやっぱり福富先輩が好きだから、帰り道にはもっと勇気を出してみようなんて考えながら私は緩む口元を押さえられずに擦り寄った。


⇒あとがき
 かっこいいしんべヱが書きたかった。でもやっぱり失敗した\(^o^)/
 多分この二人両片想いだと思います。だと良いな!←
20110129 カズイ
res

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