怪士丸と年上のツンデレ幼馴染の場合

※現パロ&成長(+7年)

 私の幼馴染は青白い顔の見た目通りに弱弱しい子だった。
 餓鬼大将的な子が喧嘩を始めれば、その喧嘩を見ているだけでふうっと意識を失うような、そんなひ弱っぷり。
 正直男の子としてどうなんだってそんな風に思っていた頃があった。
 なのに、中学生になって接点が急激に減ると同時ににょきにょきと背が伸びて……まあ昔から他の男の子に比べればちょっと大きかったけど、あっという間に私の背を追い越した怪士丸は相変わらず青白い顔の癖に、良く一緒に居る鶴町くん、下坂部くん、初孫くんの三人と一緒に地味に人気だ。
 って言うか怪士丸の学年は人気高い子が多すぎる。
 怪士丸と同じ図書委員の摂津くんなんてJで始まるタレント事務所のタレントじゃないかって思っちゃうくらい綺麗でカッコいい。
 それと比べると怪士丸の人気は低いけど、その分本気の子が多い。
 私も、気付けばその中の一人だけど……誰にも言ったことはない。
 幼馴染って言う立場でしかない私はクラスも学年も部活も委員会も違う所為で中学に上がってからずっとまともに会話が出来なくなっていた。
 エスカレーター式で高等部に上がった今も全然会話できてない。むしろ中学の時より更に会話がない。家族の接点も減った!
 唯一学校で一緒に居られる図書室は私語厳禁だし……
「……はあ」
 思わずため息を零しながらも目当ての本を探して再び視線を上に向ける。
 この学校の図書室は妙に本棚の高さが高くて、私には手の届かない本が多い。
 どうにか手が届く棚だってこうして首が痛くなるほど見上げて本を探さなきゃいけないのに、そう言う場所に限って私が読みたい本があるんだ。
 同じクラスで図書委員の能勢に文句を言ったら文句は怪士丸に言えって言われるし……意味が分からない。
 高校生だからって皆が皆身長が高いと思うなよ!
 私もう高三なのに未だに小学生に間違えられ……くっ。何故小六で止まった私の身長!!
「公子ちゃん」
 ひょこっと怪士丸が本棚の陰からこちらを覗き込む。
「また届かないの?」
「……踏み台使うからいい」
 ぷいっと笑みを浮かべる怪士丸から視線を逸らし、私は一人心の中で悶絶する。
 折角の怪士丸の好意をどうして私はこうも無碍にするのかなあ!!
「踏み台ないけど、持ってこようか?」
「自分でやるからいい」
 だーかーらー!!
 誰かこの口を縫ってちょうだい!!
 私、川西の事言えないくらい天邪鬼なんだよー!!!
「そんな事言って、ジャンプすんでしょ?他の本落とすよ」
 怪士丸はくすりと笑ってこっちに歩み寄ってきた。
 ちょっ、誰か……能勢助けろ!!
 ……思わず助けを心の中で読んでみたものの、ここは人気も寄りつかない人気のない本棚。
 ちなみに図書の受付からは見事に死角になっているお昼寝スポットでもある。
 たまに眠ってて能勢に怒られる。
「僕、取るよ。決まった?」
「あ、ぅ……」
 歩み寄った怪士丸が私の顔を覗き込むように腰を折った。
 顔が近い!と思わず叫びそうになるのを堪えて、じりっと後ずさった。
「棚にぶつかるよ」
 すっと怪士丸の長い手が私の背に周り、そっと引き寄せる。
「!?」
「ふふ、公子ちゃん可愛い」
「だ、だれが」
「しっ」
 怪士丸の人差し指が私の唇に触れる。
「能勢先輩に怒られるよ?」
「っ」
 にこりと綺麗な笑みで微笑まれ、私は言葉を失う。
 って言うか唇を押さえられててどのみち喋れなかったけどね!
「おすすめは……これかな」
 すっと、私では届かない高さの本棚から本を抜き取った怪士丸は、私に取った本を差し出した。
「どうぞ」
「あ、り……がと」
 素直に言葉が紡げずに、私は本で口元を隠しながらもごもごと怪士丸にそう言った。
 小さい声だろうと小学生の頃から現在大学生の中在家先輩のもそもそ言葉を聞き取れてた怪士丸が聞き取れないわけもなく、怪士丸は嬉しそうにニコリと笑った。
 あ、青白い癖になんでこんなにカッコいいんだよぅ。
 バクバクと跳ねる心臓にぎゅっと目を瞑った私の頬にふと何かが触れる。
「?」
 恐る恐る目を開くと、怪士丸が自分の唇の前に人差し指を立てた。
 内緒だとでも言うような意味ありげな眼差しに私は頬を押さえてぷいっと顔を背けた。
「ふふ。じゃあまたね、公子ちゃん」
「粟生野先輩っ」
「はいはい、粟生野先輩」
 くすくすと笑う怪士丸を見送った後、私はへなへなとその場に座り込んだ。
 畜生、怪士丸の癖に、こんなの反則だっ。



⇒あとがき
 年下のカッコいい幼馴染とか滾る。
 身長差があったり、幼馴染だからって名前呼びで挙句ちゃん付けとか物凄く涎出ません?あれ?私だけ?
 身長高くて優しくて幼馴染に一途で先輩巻き込んで落とそうと地道に頑張ってる怪士丸とか……居たら禿る\(^o^)/
20110418 カズイ
res

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