善法寺先輩と生理中な後輩の場合
忍たまとくのたまの敷地は基本的に別れていて、当然医務室も異なる。
だからくのたまが忍たまの敷地内にある医務室にお世話になることは早々ないんだけど、極稀に忍たまの敷地内に居る時に怪我をしたり、先生が出張でいらっしゃらないときなんかにふらりとくのたまが現れる事がある。
一つ年下のくのたま、粟生野公子ちゃんもそんな一人で、他のくのたまたちと忍たまへの悪戯を仕掛けている最中に気分が悪くなり、くのたまの先生が出張中と言う事で医務室にふらりと現れた。
だけど新野先生も今はたまたま席を外していて、僕はどうしていいものかと青い顔をしている公子ちゃんを前におろおろとするしかなかった。
普通の怪我や病気なら僕だって多少は心得があるけど、流石に月の障りに関する薬は忍たま側の医務室に揃えてはいない。
「え、えらいこっちゃ〜」
焦る僕をちらりと見上げ、公子ちゃんは「あ」と小さく呟く。
「な、何!?」
思わずびくりと反応してしまいながら公子ちゃんに近づく。
公子ちゃんは腹部を押さえていた手を伸ばし、僕の胸にとんと手を置く。
「善法寺先輩」
「は、はい!」
まるで迫られているかのような体勢に思わずドキドキしながら、公子ちゃんの言葉を待つ。
「少し試したいことがあるので失礼します」
「試したいこと?」
僕が首を傾げている間に、公子ちゃんは顔を僕の肩口に擦り寄せるように当てた。
制服越しに公子ちゃんがすんと鼻を鳴らすのを感じて、思わずごくりと息を飲む。
な、何をされるんだろう僕。
って言うかこれってもしかしてくのたまの罠!?
若干ビクビクしながらも公子ちゃんの次の反応を待っていると、公子ちゃんは僕の肩口でほうっと溜息を零し、ゆっくりと僕に身を預けてきた。
「……薬の匂いですね」
「え?」
「善法寺先輩が」
くすくすと笑いながらも、公子ちゃんは僕の肩口にすり寄る。
え?何?僕甘えられてるの?
って言うか忍耐力を試されてるの?
「くのたまの先輩から聞いた事があるんです。月の障りの痛みが酷い時は異性の匂いを嗅ぐと落ち着くって」
「へー……」
「でも効果のない先輩も居たみたいなんで、体質とか相性の問題もあるかもしれません」
初めて聞いたなあと感心した声を上げれば、公子ちゃんはくすくすと笑って補足を入れてくれた。
「善法寺先輩の匂い、私は落ち着きます」
「薬の匂いだよ?同室の留三郎にはいつも怒られるくらいには臭いと思うんだけどなあ……」
忍者たるもの〜と煩い文次郎が同級生に居るので出来るだけ気を付けてはいるけれど、昨日も部屋で薬を煎じていたから少し臭うかも。
思わず左腕を鼻に近づけてすんと臭いを嗅ぐ。
一晩同じ匂いを嗅いでいたから若干麻痺してるけど、やっぱり臭う。
「これだけ近づいてれば善法寺先輩自身の匂いも混じってますから」
ふふっと楽しそうに笑った公子ちゃんに僕の心の蔵がどきりと跳ねる。
か、可愛い……って言うか、確かにこの位距離が近いと体臭って良くわかる。
くノ一だって僕ら同様に匂いには気を使っているから、必要最低限の清潔感のある匂いとほんの少しの香料と化粧の匂い。
女の子特有の甘い匂い……って自信を持って言えるほど女の事の接点はあまりないから比べられないんだけど、すごくいい匂いであることに間違いはない。
ああ、やっぱり僕忍耐力試されてるのかな!?
「善法寺先輩」
上目使いで公子ちゃんが僕を見つめる。
「まあこうしに来てもいいですか?」
「え?あ、う……」
元々公子ちゃんとの接点なんて授業でちょっとで、こういう風に公子ちゃんを意識したことなんてなかった。
でも改めて公子ちゃんが女の子だなって感じた上にこんなにドキドキさせられるだなんて思ってもみなかった。
「駄目ですか?」
「駄目……じゃ、ないですっ」
公子ちゃん、その顔は反則だよ!
あああ、忍びの三禁!!!
僕って本当忍耐力ないなあ!!!
半ば自棄になりながら、公子ちゃんの腰に手を回して引き寄せる。
「その変わり、僕以外で試しちゃ駄目だからね?」
ほんの少し反撃とばかりに耳元に囁けば、公子ちゃんは身体を強張らせながらもこくりと頷いた。
嗚呼可愛い。
駄目だ、僕公子ちゃんに嵌る。
そして文次郎に怒られる……僕って、ついてるようで、結局不運だなって思っちゃった。
畜生!文次郎め!!!
⇒あとがき
真実かは知りませんが、一応生理痛ネタとしてやらねばと思い書いてみました。
生理痛の時に異性の匂い意識して嗅いだことねえよwwwって事で真相は確かめてませんが……誰か知ってる方教えてください。
20110320 カズイ