25.初めて

※R15ですらない気もしますが苦手な方はこちらから話の途中に飛んでください。


 社の裏手には一見すると深い森が続いているように見える。
 だけど、その森はあの水神様の術だろう結界によって作られた偶像の様だった。
「この森の奥だね」
「森が揺らいでて目が痛いです」
「?……私には普通に見えるけどなあ」
 数度瞬きをして目を擦る不破くんは私の言葉に苦笑しながら歩き出した。
 我慢をするつもりなのか、目を細めている不破くんに手を引かれるように私は森の中へと足を踏み出す。
 年に数度経験する結界を潜る感覚に似たそれは、菫隠のものと違い、どこか冷たい感覚を覚える。
「大丈夫ですか?」
「あ、うん」
 ぞくりと感じた冷気に身体を振るわせれば、不破くんが心配そうに私を見る。
 私は首を盾に動かし、目の前に広がる泉に目を向けた。
 青々とした木々に囲まれた中心に広がる泉の中央付近には苔生した岩があるだけで他に何かあるようには見えない。
 これが蛟隠の村へと繋がっていた泉……
「静かですね」
「うん」
 鳥の囀りすら聞こえないこの場所は村の入り口と同時にもう一つの結界だったのかもしれない。
 泉に近寄り、水をそっと指先で撫でる。
 未だかつてないほど清らかな泉の水はとんでもないほど純粋な水の気の塊に感じた。
 水は火に剋つ―――なるほど水で轟隠の気を抑えてと言う事だろうか。
 でも抑えてどうするんだろう。
 生憎私は土属性が強いので水に剋ってしまう。
「今野先輩?」
「え、あ……ごめん。はじめよっか」
 私はすっと立ち上がったものの、小袖姿の自分の身体を見下ろし躊躇った。
 禊は普通白衣姿で行うけど、今日、小袖の内側に着ているのは白ではなく深緋色だ。鴇色の小袖を選んだのは失敗だったかな……まあどのみちこれは禊じゃないし、裸になるんだから気にしすぎるだけ無駄だろう。
「ちょ、今野先輩!?」
 組紐に手を伸ばした私に不破くんが慌てる。
「何をしようとしてるんですか!?」
「何って……不破くんが返事したんじゃん」
「……え?」
 本当に意味が分からないらしい不破くん袴の紐に手を伸ばした。
 流石にそれは不味いと思ったのか不破くんの手が私の手を阻止した。
「ちょ、だからっ」
「言ったでしょ?不破くんは私を食べていいの」
「今それを言いますか!?」
「だから今からそれをするんでしょ」
「!?」
 不破くんは目を見開き、私をまじまじと見つめる。
 じっと見つめられる事に慣れていない私はドキドキと激しく脈打つ心臓を押さえたい衝動に駆られたけど、その手を不破くんに捕まれていてそれが出来なかった。
「印って、そう言う意味だったんですか?」
「うん、まあ大人は誤魔化すよね」
 苦笑して言えば、不破くんはかあった頬を赤らめ、慌てて私から手を外した。
 私は自由になった手で高鳴る胸を撫でるようにそっと押さえ、組紐に手を伸ばした。
 するりと紐が解けると、紐によって裾を持ち上げられていた小袖の裾が重力に従って落ちる。
 まだ昼を少し過ぎた時間と言う事もあって明るい外で素肌を晒すのにはやっぱり抵抗があって、私は不破くんに背を向けながら小袖から腕を抜いた。
 この世界に来る前にも、この世界に来てからも、私は一度として男の人とそう言う事をしたことはない。
 座学で知識として頭に叩き込まされたけど、私たち四人は基本的に戦忍志望なので美土里ちゃんみたいに四年生から色の実技授業があるわけじゃない。
 でも房中術の実技授業を待ってくれるのはこの学年までで、私たちは授業で忍たまの誰かや、見知らぬ誰かに抱かれるのだ。
 いつとは先生は明確にしていないけど、それよりも前に好きな人と済ませたい人は済ませて良いらしく、委員長は既に済ませたらしい。相手は教えてくれなかったけど。
 初江は授業で当たった人で構わないと言ってそれ以上は何も言わなかったけど、多分好いた人が居るんだと思う。誰と彼女が口にしたことはないけど、何となくわかる。やっぱり一緒に過ごしてきた時間は短くないからね。
 外気に晒された身体がふるりと震えるのを感じながら私は小袖を軽く畳んで水の中へと足を踏み入れた。
 泉の深さはそう深くはなくて、奥へと進んでも臍の辺りに僅かに届かないくらいだろうかと言う程の深さだった。
 泉の中心となっている苔生した岩の所まで来ると、そっと柔らかな苔に指先を這わせた。
 清らかな泉の元は恐らくこの岩だろう。強い霊気を感じるし、足元から水が湧いているのを感じる。

―――はやくはやく

 期待するような囁き声に思わず笑みが零れた。
「君は随分と急き勝ちなんだね。でも確かにそうだね、早く来てほしいね」
「今野先輩、今何か……うわ!」
 私の声に思わず振り返った不破くんは私の格好にまた後ろを向いてしまった。
 ココからでも不破くんの耳が真っ赤なのが良くわかる。
「ごめんなさいっ。その……向こう、向いててください」
 段々尻すぼみな声に私は首を傾げた。
 だけどすぐに不破くんが服を脱ぐんだと気付いて慌てて不破くんに背を向けた。
 思わず肩まで水の中に沈み、両手で顔を覆った。
 いくら現代で裸に近い格好に慣れていたからって胸や秘部まで異性の前に晒したことない私がこうして生まれたままの姿でここまで来たのは、不破くんが照れながら咄嗟に背を向けたからだ。
 私自身も背を向けていたけど、不破くんの反応位見てなくたって感じられたから……
 静かな空間の為か、布擦れの音は私の耳にまで届いた。
 身体を冷やすほどではないとはいえ、体温よりは確実に低い水温に浸かっていると言うのに身体が妙に熱くて、私は胸の前で手をぎゅっと握りしめた。
 ちゃぷんと水に入る音が聞こえ、ざぶざぶと私の方に不破くんが近づいてくるのが分かる。
「……今野先輩」
 躊躇いがちに不破くんの手が私の肩に触れる。
 思わずびくりと反応してしまえば、その手が胸元に周り、そっと抱きしめられる。
「……緊張しますね」
「……うん」
 ぎこちない返事になりながらも、私は不破くんの腕に手を這わせた。
 乙女な自分痒い!なんて心のどこかで思ったけど、不破くんの腕に包まれてるからから、そんな自分が出てこない。
 不破くんの腕が緩み、私は身体を反転させられた。
 熱に浮かされたような瞳で見つめられ、緊張しながらも私は目を伏せた。
 そっと唇に不破くんの唇が触れて、離れる。何度か繰り返されるそれに応える様に私は唇を開き、不破くんの舌を受け入れる。
「んっ、ふ……ぁ、ん、は……」
 水の中で立ったままで居られる気がしなくて、ふら付いたら不破くんに苔生した岩に軽く押し倒された。
 二百年の間、本当に他に誰も人が立ち入らなかったのだろう。
 岩にびっしりと生えた苔は背中に当たっても痛くなくて、寧ろちょっと硬めの絨毯に寝転がったような気さえした。
 岩自体が大きくて、恐らくこれが隠れ里に繋がる鍵―――磐座だったんだろうと思わせられる。
 って言うかある意味ベッドみたいなものか?それにしちゃあかなり狭いけど。
「あっ」
 不破くんの手がまだ未成熟な私の胸を掴む。
 不破くんの手が大きいのか、私の胸が小さいのか……両方な気がするけどそこまで小さくはない。多分Bくらいはあるはず!
 ……メジャーないから分かんないけど。
 不破くんらしいと言うか、初々しいと言うか……荒く揉まれてちょっと痛かった。
 思わず顔を顰めれば、不破くんがそれに気付いて手つきが優しくなった。
 唇に触れ続けていた唇が離れると、右の胸に舌が這う。
 指先がそう触れる事のなかった突起に舌先がちろちろと触れる。
「ああっ……んっ」
 ぬるぬるとした優しい感触ばかりで頭がどうにかなってしまいそうだ。
 思わず合わせたままだった太ももを摺り寄せれば、水とは違うぬるっとした感触を感じた。
「やっ、うそ」
「今野先輩?」
 不破くんが首を傾げ、私の顔を覗き込む。
「や、なんでもない。続けてっ」
「でも……」
 心配そうな不破くんの表情に私は両手で顔を覆った。
「……初めてなの」
「え?」
 向こうで生きた17年の間も、こっちに来てからの6年間も私は一度として誰かに身体を開いていない。
 なのに初めてで濡れるってどういうこと!?不破くんの愛撫だってそう多くなかったのに……私って本当にエロい子だったの!?
「……僕も初めてです」
「うん、それは何となくわかる」
「うっ」
 申し訳ないけど、手つきだとかでわかる。
 言葉に詰まり、顔を真っ赤にして背ける不破くんが指の隙間越しに分かった。
「……忍たまはくのたまほどそう言う授業ないし……三郎みたいにそう言う話好きじゃないから、下手かもしれません」
 って言うか多分下手な部類だと思う。
 でも相手が不破くんだから私は気持ちいいって感じてるんだと思う。
 これにテク加わったら私多分死ぬ。
 私は思わずちらりと手を退けて不破くんのそそり立つ下肢に視線を向けた。
「……いや、私、死ぬかもしれない」
「どこ見て言ってるんですか!」
 不破くんが慌てて手で隠すけど、ばっちり見えました。
 ほら、BLとかでありがちなガテン系な攻のマラ?……うん、例えるならそんな感じの巨根だ。
 処女なのにそれ入るの?
「素股じゃ駄目だよね」
「そんな真剣な顔で悩まないでください!って言うか話反れてますから!」
「あ、うん、そうだね。あまりの現実に脳みそが全力で逃避してた。ごめん」
「もうっ」
 顔を真っ赤にしながら不破くんがそっぽ向いた。
「痛くしたくはないですけど、正直自分のが人より大きいのは分かってますから、多分痛い思いさせるかと思います」
「十分慣らせばいけるよ……多分」
 帰りは絶対歩けない気がするけどね。
「慣らす?」
「……鉢屋のド畜生!不破くんにそこまでしっかり吹きこめよ!!」
「だから僕がそう言う話苦手なんですって!……ああもう、女の人に説明させてすいませんっ」
「いや、いいんだけどさ……なんか自分がエロい子だって認識を認めるみたいで恥ずかしい」
「?」
「いや、不破くんは気にしないで。こっちの話だから」
 苔生した岩の上に座り、私は恥ずかしいのを必死で堪えて自分から足を開いた。

  *  *  *

 何度かくらくんに指でイかされながら、しっかりと入り口を慣らして受け入れたものの……やっぱりきつかったです。
 私はぐったりとくらくんの背に身体を預け、溜息を零す。
 本当なら前に抱えてもらった方が楽なんだけど、いざ何かあった時両手とも使えないのは不味いからと私が自分で背中で我慢することを決めた。
 背負われる時ものすっご〜く痛かったんだけどね。
「……すいません」
「ううん。むしろたった一回でお預けを喰らわせて後免」
「いや、本当それはもう……掘り返さないでください」
 恥ずかしいと言うように俯くくらくんに私はくすくすと笑った。
 ちょっとした意趣返しみたいなものなのに素直に反応するくらくんが可愛くて仕方がなかった。
「った」
「大丈夫ですか?」
「ちょっとピリッと来ただけ。平気平気」
 笑った所為か、股の間に痛みが走り、私は眉根を顰めながらも笑みを浮かべて答えた。
「痛かったら言ってくださいね、華織先輩」
 行為の最中はちゃんと華織って呼んでくれたのに素面だと先輩がついちゃうんだよね。
 まあ私もくらくんって普通に昔の名前で、しかもくんまでしっかりつけて呼んじゃってるんだから御相子か。
 お互い若葉マーク状態ではあったけど、帰り際に会った水神様にはしっかりと合格を頂ける所有印になったらしい。
 別に中出ししてもらったわけじゃないんだけど、所有印ってどう言う理屈でつけられたってことになるんだろう。
 今一理解できない。
「帰ったら椛が煩そうだなあ」
「はは……僕、三反田くんに怒られちゃいますかね?」
「どうだろ。数馬の場合泣きそう」
「泣かれても困るなあ」
 のんびりと会話を楽しみながら揺れる背に、瞼がうつらうつらと下がってくる。
 逢魔時、黄昏時、彼誰時。
 忍たまの中でもよりシビアな話を持ち出してきた城に繋がるこの三つの名はこの時刻を指す。
 まだ知りうる未来には半年以上あるけれど……私と言う石が放りこまれたこの世界はどんな未来を紡ぐのだろう。
「……ま、なるようになるか」
「何か言いました?」
「ううん。なんでもないよ」
 なるようにしかならないのだから、考えるのは今は止めよう。
 何があっても私は必ず生き残る。今世の隠世で、くらくんと共に―――



⇒あとがき
 私がうっふんあっはんな話を書くとだらだらだけどたまに細かく書いてしまうのでサーバーの規約に引っかからない程度にキリのいい所で切りました。あんまりぐだぐだやってもね。
 後は皆様の妄想でカバーしてください。個人的には不破様のナニはデカいんだぜ!って話が書けて満足ですv
 とりあえず成長編はこれにて終了。若干の日常挟んで天女様編です。
 一応現代から天女様来るけど今度の天女様は救済しないです。成長編の話をうまく絡められるといいなー。
20110520 カズイ
res

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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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