◆君に贈る花束

※キリリク作品

「おい、はぐれ女」
「はひ?」
 首を傾げて振り返る。
 視線の先にいるのは美白帝王バノッぴー……じゃないや、バノッサ。
 隣にはカノンもいる。
「やる」
 そう言って差し出されたのは愛らしい白撫子。
「似合わなーい」
「るせーなぁ……カノンが貰ってきたんだよ」
「けど男所帯ですからちょっとかわいそうだと思って。……貰ってくれませんか?」
「えっと、うん。けど、本当にいいの?」
「オレがやるっていってんだからありがたく貰ってろ」
「うにゃぁぁぁ!」
 がしがしと髪をかき乱され慌てて逃げる。
 せっかく整えたのにっ!!
「いくぞカノン」
「待ってくださいよバノッサさん」
 慌てたように背を向けたバノッサの後をカノンが追いかけた。
 私はもう一度愛らしい白撫子を見つめ頬をほころばせた後、鼻歌を歌いながら家路を急いだ。



 庭で洗濯物を取り込み、夕方の冷たくなっていく風に目を細めた。
 貰った白撫子は部屋に飾っている。
 白い花なのに存在感のある花となっている気がするのはくれたのがバノッサだからだろうか。
「あ、キール、ハヤトお帰り」
「ただいま小春」
「ただいま。はい、小春」
 帰ってきたキールからぽんと渡されたのは一厘の赤い薔薇。
「……何、これ」
「見てのとおり薔薇だけど」
「そんなのいわれなくたって分かるもん」
 ぷうっと頬を膨らませた小春にキールはくすくすと笑った。
「僕が持っておくより小春が持っておくほうがいいだろう?」
「そうそう」
 もう一厘の赤い薔薇。
 それはハヤトから。
「でも、どうしたの?この薔薇」
 この薔薇って普通に咲いてるものじゃないし、なんかすごく手入れされてて綺麗だし高そうだし……
「貰った」
 貰ったって……
「あ、マーン三兄弟のナルシーさん!」
「うーん、その言い方はちょっとかわいそうかもしれないね」
「あ、トウヤ、ソルもお帰り」
「ただいま。生憎僕は薔薇じゃないんだけどね」
 そう言って渡してくれたのは可愛いピンクの花。
「小春に似てるなぁって話しながらさ。ほら」
 照れたように言うソルも同じように花をくれた。
「ピンクと赤の花束、可愛い」
 ふふふと笑うと皆も笑う。
「おーい、アネゴ!アニキ!」
 ぶんぶんと手を振りながらジンガも帰ってきた。
 その手にはキール、ハヤト、トウヤ、ソルと同じように一厘の花。
「ただいまー」
「どうしたのそのお花」
「商店街のほうで売れ残りだからって貰ったんだ。はい、アネゴ」
「くれるの?」
「おう」
「ありがとう」
 また増えた。
 オレンジ色の丸く開く花。
「こんにちわ、小春さん」
「スウォンくん!」
 昨日ご飯食べにおいでってリプレが誘ってたっけ。
 なんだかラミちゃんがすごくスウォンくんのこと気に入ってるんだよね♪
 私も大好きだよ。優しいし、スウォンくんの演奏も大好き!
「あ、これは小春さんにお土産です」
 白とピンクとオレンジのかわいらしい花の小さな花束。中には咲きかけのつぼみもある。
「可愛い」
「気に入ってくれてよかったです」
 スウォンくんの笑みに癒される。
「なんかオレっちのときよりうれしそう」
「え、そう?ジンガのときもうれしかったよ。ううん、皆うれしいよ」
 慌てて付け足すと、ソルとハヤトも照れたように笑った。

「うお、すでに花だらけ」
「ガゼル、レイド、エドス!」
 ガゼルの手には一厘の淡いピンクの花。
 レイドの手にはピンクと白の花。
 エドスの手にはカスミソウ。
「外で見つけたんだよ」
「ラムダ先輩のところで貰ってね」
「それを見て引き立て役だが必要かと思ってもらってきたぞ」
 差し出された花。
 集めると大きな花束。
「えへへ」
 なんか、今日は何時も以上に幸せな日だなぁ。
「皆、ありがとうね」
 そう言うと皆も笑った。
 夕日の色と頬の色が皆一緒。
 本当……幸せだなぁ。

 小春の部屋の窓、少し寂しくもあった白撫子。
 大きな花束となり仲間入り。
 想いの詰まった大きな花束。



「皆、大好き!」



⇒あとがき
 ……(ぱたり)ほのぼのってこんな感じですよね(汗)
 ちょっと不安の残るほのぼのですがいかがだったでしょうか。
 なんだかもう少し人が欲しかったような……
 まだまだ未熟な奴ですがさやかさまへ七万ヒット記念(※)として遅らせていただきます。
20050429 カズイ
20070904 加筆修正
※PCの分です
res

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