◆我が君〜蜀編〜

「ねーねー!小春〜、遊ぼうよー!」
 私の手を取り、駄々を捏ねる。
 まるで幼い少年のようなこの方こそ、私が仕える人。
 ……のはずなんだけど、ねぇ?
「遊ぼう!遊ぼう!遊ぼう!」
 連呼するその人は、蜀の君主・劉備らしいけど、私の知ってる三国志からえっらい外れてませんか!?
 あたしゃ横山三国志(あっち)が好きなんですよ!!
 かなり本気で劉備好きだったのにっ……
 なんだよこのピンク。
 なんだよこのふわふわ。
 なんだよこのちんまいの。
 可愛いいよ?
 けどさ、時々絞め殺したくな……げふんげふん。

 よくわかんない三国志もどきなこの世界にトリップして半年かそこら。
 一緒に旅してた陸遜は孔明に指示されるまま、呉に仕えるため別れた。
 んで、私はなぜか孔明と一緒にこの私の理想から大きく外れた劉備さまに気に入られてます。
 あっちはちらリズムでガンガンせめて、三顧の礼ってなんだっけと思わず放心してしまったよ。
 なんだこの腐った人種が大好きそうな設定は!!
 大体孔明って存在そのものがエロいんだよ。あんなの孔明じゃねぇよ。
 ……まぁ、いい男ではあるから許すけど。
 でもこの劉備だけはダメ。身体が受け付けないのよ!

「あ、その、孔明は……?」
「孔明が居ないから言ってるんじゃない!」
 遊ぼう!遊ぼう!とまた繰り返される。
 私一人ほっぽって行きやがったなあの野郎!!
 今度から陸遜が言ってた"我が師"を誤字変換して"和菓子"って呼んでやる!!!
「小春は暇なんでしょう!?」
「いえ、あの、私、関羽さまの元へ行かねばならぬのですが」
 嘘だけど、なんか用事下さいって言いに行こう。
 うん、そうしよう。
 遊ぶよりは妥当な判断だ。ナイス私!
「関羽なら別に後からでも平気だよー」
「いえ、ですが……」
 色々目をつぶったところで、正直言ってあなたのテンションについていけません。
 ……って、言えるわきゃねー!
「けってーい!ほら行くよ!」
 手を引っ張られ私はその場を強制的に後にすることになった。
 仕事がしたいです!
 まともに仕事が!!

 孔明と出会わなきゃこんな事になんなかったかも。
 いや、私も陸遜についてけばよかった。
 孔明の馬鹿野郎。



⇒あとがき
 ぴんくはぴんくですから(笑)
20070529 カズイ
20080310 加筆修正
res

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