◆ギャップ
「んーっ!……こんのっ!」
つま先立ちで精一杯背伸びをしている少女がいた。
どうやら棚の上にある巻物を取りたいようだが届かず、背伸びをしているらしい。
届かないと判ってぴょんぴょんと跳ねてみたりもするが、届かない。
彼女―――小春は"少女"と言うだけあって性別は女性である。
しかし身に纏う服は男物のそれであり、普段の行動もどこか少年っぽい。
文官ではなく僕と同じ武官。それなりに腕も立つ。
得物が身の丈以上もある長刀で、それを軽々と振り回すため、お前本当に女か?と太史慈将軍に真面目に聞かれて怒っていたのは記憶に懐かしい。
あれは小動物が熊に威嚇しているようでなんだか微笑ましかった。
別に背が低いという訳ではない。
おそらく陸遜と同じくらいだと思われる。
女性の標準よりも少し高めと言ったところだろう。
しかし小春はやはり女性なのだから、僕らなんかより当然小さいわけで……
僕は小春の後ろに立ち、彼女が取ろうとしていた巻物に手を伸ばした。
「え?」
小春は慌てたように振り返り、僕を視界に入れる。
「これだよね」
「あ、ああ」
差し出すと、小春は戸惑った様子で巻物を受け取った。
「違った、かな?」
「や、あってる!」
彼女は慌てて言った。
なんだか力が篭っていて力説しているようだ。
「ありがとうな、呂蒙。助かったよ」
小春はふわっと微笑み、部屋を出て行った。
口調も男前だし、走り去る姿も男前。
けど、今の笑顔可愛かった……
僕は熱くなった頬を覚ますように手を振った。
⇒あとがき
これが恋だと気づかぬ呂蒙。だといいな。萌える。
web拍手御礼のものに加筆をいたしました。
20070529 カズイ
20070530 加筆修正