◆セクハラ
空を仰げば白い雲が流れている。
「……暇だぁ」
「そんなこと言うなら手伝ってよぉ」
背後にある部屋から声が掛る。
ごろんと廻廊の床に背を預け、仰向けのまま開け放たれた室内を見る。
そこには机の奥に座り、山のような書類に囲まれている子瑜の姿があった。
その側には書類の山を抱え、苦笑を浮かべる呂蒙。
「面倒くさぁい。っていうか私は女官っすよ女官!わかる?」
「だったらそれらしく仕事をしろよ!」
注意をしながら向こうから歩いてくる人物に目を向ける。
「あ、凌統だ。ついでに陸遜ちゃんもこんちは」
「こんにちは」
「兄貴!」
のんびりと笑顔を浮かべてまで返事をした陸遜を凌統が咎める。
陸遜と凌統の腕の中には新たに追加されるのであろう書類の山が見えた。
「え?ちょっとそれは流石にきついでしょ」
「だぁから〜、手伝ってって言ってるでしょ?」
ため息混じりに子瑜が言う。
「陸遜ちゃんファイト♪」
「そりゃぁ手伝うけど……」
ちらりと陸遜は室内を見る。
流石の子瑜も疲れているようだ。
「私にも手伝えってか」
「できるなら、頼みたい」
苦笑を浮かべて頷く。
周瑜のことだ、きっと私が手伝うことを許すだろう。
「使えないならその辺に捨ててやる」とまで言った男だ。
まぁ、あの時は売り言葉に買い言葉で、「捨てたらあの周瑜に弄ばれて捨てられたと言ってやる!」と言ったらさすがに怯んでたけど。
「この調子だと今日中には無理そうだし、手伝ってくれるならありがたいな」
呂蒙が室内から微笑んで言う。
その笑みに私はぴくっと反応をしめした。
言うなれば、きゅんと来てしまったのだよ。
わかるかな!?世の腐女子たちよ!!!!
私は勢いよく飛び起き、グッドサインを呂蒙に向けて出した。
「そのはにかんだ笑みがぐぅよ呂蒙!」
「え?え?」
呂蒙は頭上にハテナを飛ばす。
「呂蒙のためにがんばっちゃお〜っと♪」
「ええ!?僕のためぇ!?」
驚く呂蒙の側に走りより、書類を半分手に近くの机に向かう。
「終わったら呂蒙後でちゅーしてね」
「ええええ!?」
今度は顔を茹蛸のように真っ赤にした。
本当、この呂蒙はからかい甲斐がある上に初心だねぇ♪
いやぁ愉快愉快。
子瑜だと逆にやられそうであぶないけどねー。
「それお前の国で言う"せくはら"じゃねぇの?」
「ちっちっち。甘いね凌統。これは逆セクハラだよ!」
「さーやるぞぉ!」と私は両腕の袖を捲り上げ、筆を手にとった。
「……なお性質が悪い気がするのは俺の気のせいかな」
「いや、気のせいじゃないと思うぜ、兄貴」
⇒あとがき
任官試験クインテット好きです。
陸遜だけちゃん付けなのは、呂蒙同様夢主のお気に入りだからと言うわけの分からない裏設定。
そしてさり気にここでも周瑜を弄り倒す。抜け目ない私♪
20070511 カズイ