◆冬景色
季節が冬に調節されはじめて一ヶ月。
今年初めての雪が街を埋めていた。
雪と言っても人工で作られたもので、居住する人々が不自由しないように季節が調節されているここでは、冬なんてものは地球ほど寒くは無い。
手のひらをパーにして立てるほども積もっていない雪を踏みしめながら、私とキラとアスランの三人はキラのお母さんであるカリダさんに頼まれたお使いを完遂して帰宅中だった。
「さーむーいー」
耳当てを手袋をした手で塞ぐキラ。
っていうかさ、私より厚着の癖に何を言ってるのかな、この子は。
そこがまた可愛いけどね。
「キラは寒がりすぎだよ」
呆れたように言うのはキラと同じ年のアスランだ。
ちなみに私同様防寒具はコートのみだ。
この二人は同じ年でも私は彼らよりちょっとばかりお姉さんなのだ。
それでなくても女の子の方が成長期が早い所為で私は二人より頭一つは確実に大きい。
だからこそこの二人のお目付け役としてお使いに一緒に行くことになったんだろうけどね。
「子どもは風の子なのよ。このくらい我慢しなさいよ」
「無理だよリディアお姉ちゃん」
カタカタと震えるキラに私はため息をついた。
「ん?アスラン寒いの?」
「そりゃぁね」
手を温めるために口元に近づけて息を吹きかけていたアスランに気付いた。
アスランは子どもらしくない苦笑を浮かべる。
ませガキだよなぁと思いながらも私はポケットの中に入れていたカイロをアスランに渡した。
いくら子どもの体温が高かろうとずっと外に居たのだ寒いものは寒いはずだ。
「い、いらないよ」
かじかんで少し赤くなっている手に私はそれを押し付ける。
「遠慮しない」
第一そんなこと言われるとお姉さん淋しいぞ。
「でも……」
「じゃあ、手を貸して」
カイロをポケットに入れて、アスランの手を取って自分のコートのポケットの中へと導く。
「あったかいでしょ」
「……あったかいです」
照れたアスランは顔を伏せて赤い顔を隠す。
うーん残念。耳まで赤いからバレバレだよ。
可愛いなぁ。
「アスランだけずるーい!」
「キラだけずるかったんだし、いいじゃない」
「ぶう」
頬を膨らませたキラの頬をつついた私はいいことを思いついた。
うん、我ながら名案。
「キラ」
「何?リディアお姉ちゃん」
「右手の手袋外してアスランに貸してあげて」
「ええ〜?」
そしたら僕が寒くなるじゃないとキラの顔には書いてあった。
……本当、わかりやすい子だ。
「そしたらお姉ちゃんキラと手繋げるんだけどなぁ」
「本当!?リディアお姉ちゃん」
目を輝かせたキラに頷いて見せると、キラは手袋を外してアスランに渡した。
「はい」
「……ありがと」
若干自分だけだったのにと言うのがなくなったための不満を隠せないアスランがそれを受け取って填める。
同じ年頃、サイズはぴったりだ。
片手が外気にさらされた二人の手を取り、コートのポケットの中へと入れた。
荷物は背中に背負ったバッグに入れているので両手を繋いでも平気なのは幸いだった。
雪は適度に保たれていて、滑るということもなく、私達三人は真っ白な冬景色に足跡を残しながら家路へと急いだ。
⇒あとがき
種の運命の連載もどきを書いていたら、不意に書きたくなった少年ズ。
好きです。子キラ、子アス。どっちかなんて選べません。
20050123 カズイ
20080217 加筆修正