◆烏の鳴く夜

 黒く濡れたような髪が揺れる。
 ふわりと動いた髪を気がつけば握り締めていた。

「なんですか?シャニ・アンドラス少尉」

 冷たい黄色の瞳が、翳りを抱いて冷たく光る。
 そんな容貌から、リディア・クロウ少尉は"烏"って呼ばれているとかって聞いた気がする。
 ちなみに黄色い瞳はコンタクト。目が悪いかららしい。良く知らないけど。
 本当の色は知らない。見たことない。
 白い肌にさらっと流れたリディアの髪の人房だけぴんと引っ張られている。
 あ……俺が持ってるからか。
「……別に」
「では、離してください」
 書類を持っている所為か、身を捩って逃げようとする。

「あのさ、遊ばない?」
「何言ってるんですか。遊びたいのなら私ではなくクロト・ブエル少尉と遊んでください」
 ゲームってこと?うっざーい。
「私はパイロットの方々と違ってデータ整理で忙しいので」
「じゃあ、あとで」
「ですから、クロト・ブエル少尉と……」
 リディアの腕を引っ張って自分のほうに引き寄せた。
 耳元に唇を近づけると、びくっと身体が跳ねる。

「悪い遊びだからクロトはだめ」
 ぎゅっと目を閉じて、赤くなる。
 耳が弱いの?可愛い。
「だから、ね」
 小さく息を吹きかけると、さらに顔を赤くした。
「……ふえ……」
 本当に弱いんだ……
 膝に力が入らなくて座り込んでしまった。

「ね、遊ぼう」
「……や……」
 小さい拒絶に、そっと剥き出しの足に手を伸ばす。
 ザフトとかオーブとかと違って、地球軍の下士官の制服ミニスカだし。
 肌に直接手が触れる。
 柔らかい肌。
 爪を立てたら面白そう。
「俺は暇なんだけど」
「……っあ……」
 スカートの中に手を入れれば、堪えきれずに声を零す。
 書類が腕の中から零れ落ち、ぶかぶかの俺の軍服にしがみ付いてきた。
「ぃや……」
 震える腕が俺を煽る。
「わかった、から……、あと、で……」
 その様子がすごく可愛くて、烏って言うより黒猫って感じがする。
 もちろん子猫。
「約束だからね」
 ちゅっと耳元にキスをすると、真っ赤になってリディアはあわてて立ち上がってどこかに走り去ってしまった。

 足元に落ちたままの書類を見つめ、ため息をついた。
「……うっざーい」
 仕方なく俺はそれをかき集め、リディアが戻ってくるのを待ってみた。
 でも面倒だから、俺はそのままリディアを自分の部屋に引きずった。



 子猫のような烏を鳴かすのも悪くない。



⇒あとがき
 誤字が多かったよぅ(泣)
20030728  カズイ
20070514  加筆修正
res

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