◆amazing

 どうも。合法ロリが売りのAV女優・小春です。
 現在、目の前で久しぶりに一緒に仕事をすることになった煌くんが、締まりのない笑みを浮かべながら携帯をじっと見つめています。
 ついさっき来たばかりのメールに対してそこまでだらしのない笑みを浮かべるのだから、きっと煌くんの彼女か何かだろう。
 だけど、煌くんにここまで締まりのない顔をさせるほどの彼女が出来たと言う話は聞いていない。
 最後に一緒に仕事したのいつだっけ?
「煌くん、なんかご機嫌だね」
「えへへー」
「……気持ち悪いんだけど」
 でれっと笑う煌くんに私は思わず身体を引いた。
 煌くんの隣のパイプ椅子に座っていた私は、それでも急に煌くんから離れることもできず、メールに返事をしている煌くんを横目に一端片づけをしているスタッフたちの方を見た。
 ……あれ?夏海ちゃんが居ない。
―――ポフッ
 そんな音とともに頭の上に柔らかい感触が乗る。
 それが胸だと気づくのはもう突っ込むのも煩わしくなるほどされてる行為だからだ。
 同時に抱きしめられれば、男なら喜ぶところだろうけれど、私は生憎女だ。
「夏海ちゃん、重い」
「えー?でも小春ちゃん抱きしめ心地いいのにぃ」
「重いものは重いの!」
 そう言って私は夏海ちゃんの腕から逃れる。
 夏海ちゃんの胸は凶器だ。
 身長の低い私が正面から抱きつかれた日には呼吸困難で気絶してしまいそうだ。
「むぅ〜」
「むぅじゃないよ」
「いいもん。撮影中に一杯小春ちゃん抱きしめられるしー」
「えー?ちょっと煌くん、夏海ちゃん止めてよ……って、聞いてないね」
 煌くんは一生懸命あーでもないこーでもないと悩みつつメールを打っていた。
「煌くん、おトーフちゃんにメールしてるんじゃない?」
「おトーフちゃん?」
 なんだそのかわいそうな名前は。
 思わず顔を顰めて煌くんを見た。幸せそうでうらやましい事だ。
「この間ね、煌くん撮影の後に運命の出会いしたんだよー。その時煌くんが踏んじゃったのがおトーフだったからおトーフちゃん」
「あっそ」
 そのおトーフちゃんはかわいそうに、AVの撮影現場に運悪く出くわしたかなにかだろう。
 なんとなくその場面が想像できる。
「そこのレズ二人ー」
「レズ違いますー!」
「私は小春ちゃんとだったら……」
「ちょっ、夏海ちゃんだからやめてってば!」
「レズじゃねぇか」
「違いますー!あ、もしかして終わりました?」
「終わった終わった。だからそろそろ準備よろしく」
「了解でーす」
「小春ちゃん今日は一杯いじめてあげるね!」
「監督ー!夏海ちゃんが恐ろしいでーす!」
「ははは、がんばれよ夏海ちゃん」
「ちょっ、ひど……」
 監督に見捨てられた私は夏海ちゃんに引っ張られながら体育倉庫のセットへと足を踏み入れる。
 いくら外見が若くて、身長が小さかろうとこの年でブルマはやっぱりちょっと恥ずかしいものがある。
 そっと後ろの部分を直して本番を待つ。
「……って、煌くんいい加減に始まるよー!」
「あっ、ごめんごめん」
 でれっとしていた顔を引き締めるように携帯を置いて頬をぱちんと叩くと煌くんは出入り口で待機だ。
 同じ体育倉庫のセットに居る夏海ちゃんが私を少し見下ろす。
「小春ちゃん、おトーフちゃんすごくいい人なんだよー」
「へー」
「煌くんにお願いして今度一緒に会いに行こうね♪」
「おトーフちゃんに?」
「うん。あ、そうだ。おトーフちゃんは男の子だからね」
 思わず目を見開いた私を無視して、監督が始まりの合図を出す。
 ああ、叫ぶわけにもいかず、私は筋書き通りにぺたっと尻もちをつくしかできなかった。
「『……夏海、先輩?』」
 茫然と見上げた先には無邪気な笑顔。
 ……ヤバイ、本気で犯されそうだ。



⇒あとがき
 完全なるGLではないですが、GLです。やっほい。
 おっぱいこそロマンな話、たまにはOKですよね(´・ω・`)
20110410 カズイ
20110621 加筆修正
res

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