◆.hack//FATE

※.hack//SIGNとクロス

 いつからだろう。
 現実の人間が怖いと思うようになったのは。
 いつからだろう。
 ゲームの中だけが私の生きる場所になったのは。

  *  *  *

 適当な場所に座って、私はじっとやってくる人、帰って行く人を見つめていた。
「久しぶりだな、リディア」
 横から声を掛けて来たのはバルムンクだ。
 久しぶりに会う彼を懐かしいとは思ったけれど、妙に視線が集まるのが難点だ。
「サボり?」
 嫌味も含めて私は声を掛けた。
「ああ。お前は誰かと待ち合わせか?」
「……別に」
 ただ人の流れを眺めているだけだ。
 時間はある。腐るほどに。
 とりあえずバルムンクの行方を尋ねるメールに溜息をつき、返事をした。
「どうかしたのか?」
「バルムンクのサボりをチクった」
「なにっ!?」
 バルムンクは恨めしそうに私を見ると、その場を立ち去って行った。
「……嘘だよ、バーカ」
 消えて行くバルムンクの背を見ながら、私はほくそ笑み、私は再びゲートを見直した。
 だけど私の視界に入ったのは、ゲートではなく、呪文使いのPC
「すいません」
「なに?」
「ずっとここにいたんですよね」
 あの辺りに居る人に聞きましたと彼は答える。
「そうだけど」
「だったら……えっと、重剣士と弓使いの組み合わせを見てませんか?」
「そんなのいくらだっているよ」
「……それもそうか」
 困ったなぁと呟き、彼はゲートをじっと見つめる。
「待つなら座れば?」
「あ、はい」
 少し距離を置いて、彼は隣に座った。
 見たところビギナーだな。つまらん。
「あ、メール?」
 ぽつりと彼は呟き、黙りこむ」
「……馬鹿結人。折角のオフだってのに……」
 愚痴っぽく呟くと、彼は立ち上がった。
「待ち人来たらずのようです。……帰ります」
「そう。折角の休みだったのに残念ね」
 彼は肩をすくめて見せた。
「また遊びにいらっしゃい。The Wolrd(ここ)はいいとこよ」
 現実ではないから。
「不思議な人ですね」
「よく言われる。変人だと言う奴もいる。……PC名は?」
「えい……ヨンサ。見ての通りの呪文使い」
「ヨンサ、か。韓国人っぽいね。私は杖使いのリディア」
「リディアか。また、会える?」
「会えるよ。大体いつもここにいるし、特別にメンバーアドレス教えてあげる」
 それは不思議な出会い。
 私は何か運命のようなものを感じた。
「……遊んでく?」
「できれば」
「じゃあ行こうか、ヨンサ」
 久しぶりに私はその場を離れた。
 確かミミルに呼び出されてからだから、一週間ぶりかな。



「リディアって、もしかして凄く強い人?」
「もしかしなくても強い人」
 まず最初に私はヨンサに敬語を止めさせた。
 だってさ、なんかウザイじゃん。
「で、本日の感想は?」
「楽しかった」
「ならよかった」
 笑ったのも随分と久しぶりだった。



⇒あとがき
 .hackのネタを盛り込んだ未来夢。
 ていうか、.hack//SIGN以外は微妙にしか知らんのですけどね。
 ↓の日付で書いたってことはすっげぇ前なんですよねぇ……
 何考えてたんだろう。この頃の自分。
20050824 カズイ
20090321 加筆修正
res

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