◆罠×罠
※リク作品
私には苦手な人がいます。
蓮二お兄ちゃんと同じテニス部で、詐欺師と徒名される仁王雅治先輩。
なぜだかはわからないけど、私はあの人が苦手なんです。
* * *
「それで私、"お菓子とあたしどっちが好きなの!"って聞いたの」
「どうせお菓子って答えたんだろ?」
「そう!そーなのよ!!なに考えてんのよあのガキはぁ!!!」
丸井先輩に向かってガキだなんて私たちの学年で面と向かって言うのは奈緒くらいだと思う。
私、柳飯島の親友・笠田奈緒は去年の冬休みくらいからあの丸井先輩と付き合ってる。
少林寺って言うのを習っていて、すごく強い。そりゃもういろんな大会とかで優勝してくるくらい強いの。
だから反対する先輩たちやファンクラブの人とか一人で蹴散らしちゃったすごい子なの!
「そりゃぁお菓子のことだろ」
のんびりとそう答えるのは、丸井先輩と同じテニス部で、今年の新人戦からレギュラーになった切原赤也。
赤也はなんて言うか勘定の起伏が激しすぎて友達が少ない。だから私と奈緒は数少ない彼の友達。
奈緒とは幼馴染。私は奈緒の親友だし、赤也の先輩の妹だからって言う理由で仲良くなれたの。こう言うところはお兄ちゃんに感謝感謝。
「だから腹が立つのよ!」
「そんなこと言ったって、お前そんな先輩に惚れたんだろう?」
「そーなの。だから余計に腹立つのよ!」
「まぁまぁ、落ち着いてよ、奈緒」
「いいわよねぇ、悩みのない飯島は」
ぴんっと奈緒が私のおでこを指で弾いた。
「私にだって悩みくらいあるよぅ……」
語尾が弱くなるのは、誰にも話したことがない悩みだから。
「なによ、親友のあたしに話さないつもり?」
「え、だって……お兄ちゃんにも言ったことないんだよ?」
「……なんでそこで柳先輩が出てくるんだよ」
「そうよ。普通そう言うのは親友優先でしょうが」
呆れたような二人に、私はそうなの?と聞き返した。
するとすぐに二人は呼吸をぴったりあわせたかのように力強く頷いた。
「そうなの!?」
「……ごめん、あたしもう何も言わないわ」
「……同感」
「なんで?」
思わず首を傾げると、さらに疲れたように二人は溜息をついた。
「とりあえず、悩みの種類は?勉強?人間関係?勉強ならあたしが見てあげるし、人間関係なら赤也が壊してくれるわよ♪」
ぐっと親指を立てながら奈緒は自信満々に言い放つ。
「なんで俺は壊すほうなんだよ」
「あんたの十八番じゃない」
「うっ、否定できねぇ」
肩を落とした赤也を見ながら、私と奈緒は笑った。
不意に奈緒は赤也に教科書と筆箱を預けて私の後ろに立った。
「うむ、悩みはここの成長じゃなさそうね……」
「きゃあぁ!!!」
背後から胸を鷲掴みした奈緒の手から逃れるため、私は身体を反転させた。
いつもなら「もう!」って奈緒に怒って終わるのに、私の身体をふわっと宙に浮くような奇妙な感覚が襲った。
「え?」
私、階段から落ちてるんだって気づいたのは、奈緒たちから離れてから。
悲鳴をあげられなくて、背中に訪れるであろう衝撃に目をぎゅっと閉じ、歯を食いしばり、身体を強張らせた。
だけど覚悟していた衝撃はいつまでたっても訪れなくて、変わりに誰かに助けられたって言うことが判った。
「大丈夫ですか?」
安心させるような優しい声に顔を上げると、コートの外からだけど、何度か見かけたことのあった柳生先輩の顔があった。
「怪我はありませんか?」
「あ、な、ないですっ」
恥ずかしさと照れで、顔に熱が集まる。
私は慌てて柳生先輩から離れた。
「スイマセンでした。それからありがとうございます!」
「構いませんよ。では、お気をつけて」
そう言って先輩は優しい笑みを浮かべ颯爽と立ち去っていった。
はぁ……やっぱりかっこいいなぁ紳士さま!
「ちょっと、大丈夫だった?」
「やっぱり柳生先輩はかっこいいね!」
「……恋の悩みだったわけ?」
奈緒が、私が落とした教科書やペンケースを纏めて渡してくれた。
「違うよ。でも、柳生先輩みたいに優しい人は好きかも」
「柳先輩を筆頭に?」
赤也の台詞の返答に私は困った。
「うーん。蓮二お兄ちゃんは優しいけど、筆頭って言うほどでも……そうだなぁ、赤也とか、かな?」
「俺がぁ?」
「うん。赤也、優しいよ。ね、奈緒」
「え、あー……正直その意見はかなり微妙」
「だよな!……なんでだ?」
後半、私に赤也は問い掛けた。
「だって、入学式のときとか、初めてテニス部見学行ったときとか声を掛けてくれたじゃない」
「それ、二回とも喧嘩売られてるはずよ?」
「え!?そうだったの?!」
「そうだったんだよ」
ほんの少し気まずそうに、赤也が笑みを浮かべながら奈緒の言葉を肯定した。
「あんたが天然だって忘れてたわ」
「んなことより急ごうぜ。そろそろ授業始まるぜ?」
「うん」
スカートについたほこりを払って、先に歩き出した奈緒と赤也の後を私は追いかけた。
* * *
授業が終わってから、掃除のために音楽室へと奈緒と赤也と向かう。
三人とも箒持ってダラダラと掃いて終わり、っていうのはいつものこと。
「で、結局飯島の悩みってなんなわけ?」
「えっとね、この間私、授業サボっちゃったよね」
「あー、寝過ごしたとか言ってたっけ?私も赤也もテニス部のミーティング行ってたから誰も起こしてくれなかったんでしょう?」
「そう」
私はご飯を食べたら眠くなってしまうお子様体質なのだ。
でもそれは毎日じゃなくて、一応ごくまれになの。
あの日はたまたまそんな日だった。
「あの日は中庭の木陰にいたから誰も気づいてくれなくって、そのまま六時間目まで……」
「でも六時間目来てたじゃねーか」
「最後まで聞いてよ。六時間目まで寝かけちゃったの!」
「誰かが起こしてくれたって事?」
「……うん」
「もしかしてその人が気になる、とか?」
何故か恐る恐ると言ったように赤也が聞いてくる。
……ごめん、赤也がなにに怯えているのかわからないよ。
「わからないから悩んでるんだよぉ」
唇を尖らせると、奈緒が私の頭を撫でてくれた。
「で、その相手は?」
「仁王先輩」
「に、にお……っ!?」
驚いた二人は咄嗟に大きな声で名前を呼ぼうとして慌てて口を押さえた。
同じ掃除場所の人たちはさぼっているからいないけど、いつ人が入ってくるかわかんないもんね。
「飯島、仁王先輩のことが好きなのか?」
一応声を抑えてくれた赤也の言葉に私は首を横に振った。
「気になるんなら好きじゃないの?」
「だから、わかんないんだってば。だって、仁王先輩ってなんか怖そうなんだもん」
「真田副部長を怖がらないくせになんで仁王先輩が怖いのよ」
「え?真田先輩って怖いかなぁ?」
「……お前はそう言うヤツだよな」
呆れたように赤也が溜息をつく。
「赤也、それ以前の問題よ。真田先輩は柳先輩と一緒で飯島にとんでもなく甘いのよ」
「ああ、なーる……」
「?」
「とりあえず、柳生先輩にお礼を言いに来るついでに見学にでも来なさい。私から柳先輩と真田副部長に言っておいてあげるから」
「ごめん、今日文芸部のミーティングが……」
「その後でもいいから来いよ」
「やーね、いやに協力的な赤也なんて珍しい。明日は突発的な台風でも来るのかしら」
「来ねぇよ。俺にも色々な事情ってもんがあるんだよ」
「?……まぁ、そう言うことにしておいてあげましょう。帰りが遅くなるならなお更ね。柳先輩も心配することだし、遠慮なくいらっしゃい」
「じゃあ、遅くなると思うけど、後から行くね?」
先輩たちの引退作品集の編集とかの話し合いが予想以上に長引いて、テニス部のコートに向かうことが出来たのは結局五時半を過ぎてからだった。
テニス部には六時までだから、今から走ってギリギリって言う時間だと思う。
「おそーい!」
「い、一応、走った、ん、だよ?」
「このままこないかと思うくらいには遅いの。何話してたわけ?」
私は少し呼吸を整えてから奈緒に向き直った。
「えっとね、引退作品集の編集担当決めてたの。私、そう言うの苦手だから断ったの。これがもう全然終わらなくって……」
「ま、引き受けなくて正解ね。あの文芸部の面子のことだから、飯島に面倒を押し付けようとしてたのに断られてどうしようになっちゃったんでしょうね」
「え?そうなの?」
「そうなの。まったく、天然さんはうらやましいくらい可愛いわねぇ。さ、行くわよ」
そう言って奈緒は私の手を引っ張る。その反対・利き手にはしっかりとハリセンが握られている。
いつもそれで充血した赤也を叩いて止めてるって言うけど、赤也のコートを通り過ぎたとき、充血して試合している最中だった。
っていうことは、これを誰を叩いたんだろう。
気になるけど、あえて突っ込まないでおこう。やっぱり自分の身が可愛いしね。
「ねぇ、蓮二お兄ちゃんは?」
「今現在試合中。ちなみに帰りに呼び出し食らってるから丁重にお断りするために一緒に帰れないって伝言貰ってるわよ」
「えー、やだ」
「やだもなにもなしよ。ついでだから先輩を送迎役に誘ってくれるそうだけど、どうする?」
「柳生先輩?」
そう言うと、奈緒は私の首に後ろから腕を回し、こっそりと耳打ちする。
「ばかね、仁王先輩に決まってるじゃない♪」
「ええ!?」
大きい声を上げると、不機嫌そうな丸井先輩が、恨めしそうにこっちを見ていた。
……さっきのハリセンの被害者は丸井先輩か。
そしてその不機嫌の被害者はダブルスパートナーの桑原先輩、と。
お疲れ様です、桑原先輩。
「で、ちょっとコート見て」
奈緒の指差すコートに私は視線を動かす。
コートにいるのは仁王先輩と柳生先輩のペアと真田先輩と蓮二お兄ちゃんのペア。
「あれ?」
なにか違和感を覚えて、私は目を凝らす。
よく見てもその理由がすぐにはわからない。
蓮二お兄ちゃんだったらすぐに理由が浮かびそうなんだけど、生憎そこまで目は肥えてないんだよね。
「なんだろ……えっと……」
仁王先輩がすごく速い球を打って、蓮二お兄ちゃんと真田先輩の間を抜いた。
得点があがって、仁王先輩と柳生先輩は手を小突き合う。
「あ、わかった」
「なにが?」
「柳生先輩の身長が少し低いんだ。……あれ?でも、なんで?」
確か蓮二お兄ちゃんのデータだと柳生先輩の方が身長が高かったはず。
もしかして仁王先輩の身長伸びたのかなぁ……
「そこまでわかってどうして答えにたどり着かないかなぁ」
「?」
なんか、身長が伸びたと言う理由ではない感じの言い方。
奈緒は答えを教えてくれる気はないらしくて、仕方なくコートに向き直る。
「じゃあ、私は部活に戻るね」
「うん」
「あ、そうそう。ヒントはマスカレードよ」
じゃあねと奈緒は駆け足でどこかへ行ってしまった。
マネージャーって忙しいらしいし、大変なんだと思う。
それにしても、マスカレード……って、仮面舞踏会だよね?
試合を見つめながらその意味を考えてみる。
でもさっぱりわかんない。
そう考えている間に試合は僅差で仁王先輩と柳生先輩ペアの勝ちで終わった。
時間が時間だからってことで一年生と奈緒が片付けのためにコートに入って、レギュラーとそれに近しい二年生が集まって今日の反省を始める。
一年生も片付けが大体終わり次第それに加わる。
「私、どうすればいいんだろう」
そう思いながらその光景を見ていると、レギュラーの人たちがそそくさと部室へ行ってしまった。
声を掛けるべきなんだろうけど、練習が終わって疲れてるだろうし……」
「うーん……」
「いつまでそうしてるつもりだよ」
「あ、赤也。……着替えないの?」
「その前にお前、お礼言うんじゃなかったのか?……って奈緒が」
「奈緒は?」
「倉庫の片付け当番。今週テニス部が担当だから」
「そうなんだ」
「で、先輩なら折れが読んできてやるけど?」
「じゃあ、柳生先輩と仁王先輩」
「二人ともか?」
「一応、ね。……あとさ、マスカレードって何?仮面舞踏会だってことはわかるんだけど、いまいち意味がわかんなくて……」
「俺が話してもなぁ……まあ、それなら本人たちから聞けよ。とりあえず俺、呼んでくるわ」
「うん、お願い」
赤也なら絶対連れてきてくれるから、とりあえず深呼吸。
落ち着け、私。
大丈夫、柳生先輩も一緒に呼んでもらったんだから、少なくとも仁王先輩と二人きりじゃないんだから!
「お待たせしてすみません」
「ぷり」
もう一回深呼吸をと思って息を吸い込んだ瞬間、後ろから声を掛けられ、私は咽た。
「大丈夫ですか?」
「は、はい」
背中をとんとんと仁王先輩が軽く叩いてくれて、柳生先輩が優しく声を掛けてくれた。
うわー、やっぱり二人ともかっこいいなぁ……って、そんな場合じゃないよ。お礼言わなきゃ!
「えっと、仁王先輩はこの間、柳生先輩は今日、ごめんなさいでした。それから、ありがとうございました」
「今日?」
柳生先輩はそう呟いて首を傾げる。
「それは私では……」
「?」
「あ!いえ……その……柳くんの妹とはいえ一応部外者ですし……」
柳生先輩ははっとして口を塞いだ。
なんだろう。
そう思いながら二人をよく見てみた。
「あれ?」
今度は私が首を傾げる番だった。
さっき試合してたときは柳生先輩のほうが低いと思ったのに、柳生先輩の方がやっぱり高い。
これって、奈緒の言ってたマスカレードと何か関係があるのかなぁ?
「柳さん?」
「あの、マスカレードってなんですか?」
「「!?」」
そう言うと二人とも少し驚いて、互いに顔を見合わせた。
「それを誰に?」
「奈緒に聞きました。でも、教えてくれなくて……。赤也も本人たちに聞けって教えてくれなかったし……」
教えてくれますか?と問うと、柳生先輩が横目で仁王先輩を僅かに睨む。
「仁王くんが悪いんですよ?」
「そーかぁ?」
「そうです。というわけですから、仁王くんに聞いてもらえますか?笠田さんの手伝いに行かなければいけませんし」
「良かよ」
「では、失礼します」
あ、行っちゃう。
奈緒の手伝いって言うなら引き止めるわけには行かなくて、仕方なく、私は仁王先輩と二人きりになった。
「ちゃんと送ってやるから、肩の力抜きんしゃい」
「え?」
ぽんと軽く頭に手が乗った。
「あの、マスカレードの説明は……」
「帰りながらするからここで待っとりんしゃい」
着替えてはいるけど、それはズボンだけで、上着はそのままテニスウェアだった。
鞄も持ってきてないから、赤也から聞いてすぐに来てくれたんだと今更ながらに気づく。
「はい、待ちます!」
小さく笑みを浮かべて、仁王先輩は私の頭から手を離すと、部室の方へと小走りに行ってしまった。
その背中を見て、私は顔を真っ赤にした。
鏡を見たわけでもないのに自分でもわかるくらいだから、絶対。
「どうして仁王先輩を怖いって思ったんだろ……」
優しい笑顔、初めて見た。
すごく、かっこよかった。
部室から戻ってきた仁王先輩は蓮二お兄ちゃんにも言って来たからと家まで本当に送ってくれることになった。
すごく悪いような気がするけど、一人で帰ると蓮二お兄ちゃんがうるさいだろうから素直にその好意を受けることにした。
「マスカレードっち言うんはな、俺が柳生に・柳生が俺に変装して相手を動揺させる戦法じゃ」
「へぇ……すごいんですね」
感心して呟いた後ではっとした。
ということは、今日会談から落ちたとき助けてくれたのは柳生先輩じゃ……ない?
「ええ!?」
「なんじゃ、うるさい雛じゃのう」
「だ、だって……そういうことなんですよね!?」
「まぁ、そうじゃのう」
にやりといたずらが成功した子どものような笑みを浮かべた仁王先輩を見て、肩をがくっと落とした。
とりあえず、私は騙されていたようだ。
この間授業が始まっていることに気づかず眠っていた私を起こしてくれたのは仁王先輩本人だろうけど。
唇を尖らせると、仁王先輩がよしよしと私の頭を撫でてきた。
「あの」
「なんじゃい」
「なんで撫でるんですか?蓮二お兄ちゃんも、真田先輩も、丸井先輩もなんですけど」
「まぁ、ちょうどいい位置にあるけんのう」
確かに私の身長はそれほど高いとは言いがたいもの。
けど、頭撫でられてばっかりだと身長が縮みそうで怖いんですけど。
「そんなにいやなら別の方法にするが、どうする?」
「じゃあそっちで!」
そう言うと仁王先輩はさっきと同じ笑みを浮かべる。
なんだかいやな予感に思わず一歩逃げると、一歩追いかけてきた。
「に、仁王先輩?」
「なんで逃げるんかのう」
「だ、だっていやな予感するんですもん」
「しょうがないのう。また今度にするかのう」
「結構です!」
「くっくっく……おもしろい雛じゃのう」
「私、雛じゃないです」
膨らませた頬を仁王先輩が大きな片手で挟んで潰す。
……ちょっと腹立つ。
「ま、おもしろい以前に可愛い雛じゃがのう」
「え?」
驚くよりも前に、体が自分の意志に逆らって仁王先輩に近づいた。
「ん……ん?」
腰に回った手に引き寄せられて、私、キスされてる!?
「〜〜〜〜〜っ!」
息ができなくて先輩の胸をたたくけど、逆に口付けが深くなって逃げられない。
ようやく話してくれたときは息が切れ切れで、体が自由が利かない。
顔は熱くて赤くなってるのがわかるから上げられない。
恥だらけでいろんなことが一杯一杯です。
「ホント、かわいい雛じゃな」
顔を上げた瞬間、額に軽く唇が触れる。
「なっ……」
「俺は飯島が好きなんじゃが、飯島は俺が嫌いかの?」
「し、知りません!」
恥ずかしくて顔をそらすと、仁王先輩はくつくつと笑う。
ていうか、名前で呼ばないで下さい。
苦手じゃなくて、好きかもって思った瞬間キスされて恥ずかしい。
「飯島」
真面目な顔で言われて、小さく頷く。
相手に伝わったかなんてわからないけど、また強く抱きしめられたから多分伝わったんだと思う。
「実はな……」
耳に囁かれた、実は巧妙に仕組まれていたこの告白劇に蓮二お兄ちゃんと赤也、そして途中から奈緒が一枚噛んでいると知るのは後僅か。
⇒あとがき
仁王夢を書いてといわれた瞬間にこの話が浮かびました。
最初はもっと薄い内容だったのが、赤也とブンちゃんはでないんですか?と言われ調子に乗りました。
やりたいことを詰め込むとこうなるということをひしひしと学ばされました。
20040909 カズイ
20070719 加筆修正