◆Black Black

 不吉な黒ほど君にふさわしい。


「あ、恭弥」
 応接室の扉を開けると、パッと顔を上げる小春。
 小春は相手が僕だと気づくと、にこっと笑った。
「おかえりなさい」
 黒い長い髪が似合う年相応の普通の女の子だ。
 結わずに流してある髪が隠すように流れるのは、並盛の今の制服ではなく昔の濃紺のセーラー。
 小春だけに許した制服だ。
「変わったことは?」
「遅刻者の罰掃除が終わってないくらいかな」
 小春は別に喧嘩が強いわけじゃない。
 だけど小春は僕の彼女だ。
 大切とか好きとかはよくわからないけど、傍に置いておきたかった。
 だから手に入れた。
「それ」
「ん?」
「風紀委員(うち)の仕事……じゃないね」
「ああ、私の代役が決まらないみたいでね」
 ペンを持っていた手で髪を耳にかけると、また書類にペンを走らせる。
 小春は元々生徒会の役員で、副会長だった。
 無理辞めさせたけど、まだ後任が決まってなかったのか……仕事が遅いな。
「恭弥」
「何?」
「呼んでみただけ」
 くすくすと笑う。
 これが小春じゃなかったら噛み殺してるところだ。
 僕は小春に歩み寄り、頭の後ろに手をまわして引き寄せた。
「んっ」
 耳朶に舌を這わせぺろりと舐めると、小春が小さく鳴いた。
「ちょ、恭弥っ……誰か来たら」
「構いやしないよ」
「もうっ、構ってよ!」
 そう言いながらも小春は口付けを甘受する。

「恭弥って本当猫みたいね」
 唇が離れると、小春は唇を尖らせてそう言った。
「は?」
 彼女の言葉は突然でどこか掴めない。
 キス一つで何故そう繋がるんだか……
「気まぐれっていいたいの。色は絶対黒ね」
「なんで」
「不吉を運ぶから」
「不吉、ね」
「でも私にとっては幸せだからいいの。好きよ、黒猫」
「どっちの意味?」
「お好きなように」
 にこっと笑ってはぐらかす。
 ちょっとむっとしたから、また唇を重ねた。

「僕が黒猫なら、君は鴉だね」
「なんで?」
 長い髪を漉きながら、その髪にキスをする。
 艶やかな黒髪。
 僕が君を見つけたきっかけ。
「濡れた鴉の色をした髪色だから」
「褒め言葉?」
「君、国語の授業受けてるんでしょ?」
「……そうね」
 それが褒め言葉だと思い出したのか、小春は頬を赤く染めた。

 不吉な黒こそ僕らにはふさわしい。



⇒あとがき
 意味不明ですけど、ようはバカップルでいちゃいちゃなんです。
 甘いってこんな感じでOKですか?月宮さま。
 とりあえず月宮さまのみお持ち帰り可です。
20060915 カズイ
20090213 加筆修正
res

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