◆恋しい……
薄暗いバーでグラスを揺らしている女が一人。
黒いスーツの肩には長い三つ編みが一房。
アジア系の顔立ちの彼女はチャイニーズ―――中国人系のイタリア人である。
「よう、また飲んでるのか?」
軽く声を掛けてくる人物に、女はふっと視線を動かす。
彼女とアジア系の男は、ジャポーネ―――日本人である。
「イエミツ」
名を呼ぶと「おう」と彼は笑った。
彼は女―――リディアの酒飲み友達であり、リディアは唯一家光を普通に呼ぶことが許されている。
他にあまり見ないであろう珍しいほどの男女の友情である。
「お前のとこのボスはどうした?」
「ボスなら日本です」
「お前は居残りってわけか?」
その言葉に、リディアは瞳を潤ませた。
今のリディアにその言葉は禁句であった。
「どうせ私は置いてけぼりですよ……」
リディアと二人ほどの幹部以外は全員一緒に日本に行ってしまっている。
だから仕事の合間にこうして自棄酒をあおっているのだ。
「ホントキャバッローネ(お前ら)はボス大好き集団だよなー」
「そっちは忙しそうですよね」
「おう。でもま、10代目にはリボーンがいるし、大丈夫だろ」
にかっと笑うイエミツに、リディアは最近は会っていない小さな殺し屋を思い出す。
まだ一歳になったばかりの凄腕ヒットマン。
「リボーン、か……」
ソレの所為でうちのボスが日本にいるんですけど!!
ふるふるとグラスを持つリディアの手が震える。
「ボス〜」
「はいはい、泣くなって」
ぽんぽんと家光はリディアの背中を優しく撫でた。
「今日はおごってやるから」
「ボス〜!」
* * *
「(色気のねえ泣き方)」
鼻をぐずぐず言わせながら泣くリディアに家光はくつくつと笑った。
本来持ち合わせている素材はもういつでも女になれる要素を持ち合わせている。
後は、内面。
「(その辺はディーノの頑張り次第か)」
下世話な考えかと思い、家光は笑みを打ち消した。
「……バーテン」
「はい?」
「いつもの、こいつにな」
「潰れますよ?」
くすくすと笑いながらも用意したのは、家光が良く飲んでいる日本酒だ。
「潰しとけ」
けらけらと笑う家光に、バーテンはしょうがない人たちだと肩をすくめる。
どうせもうすぐ戻って来る。
彼女がが愛してやまないボスは。
⇒あとがき
ディーノ夢なのにディーノが出てこない!!
と言うことで家光友情夢と言う風に言い張ることにしました(にこ)
20060330 カズイ
20070405 加筆修正