007.初☆夜会……ん?

「さて、君たちはまず、ここがどこか知りたいだろう?」
「そうですね」
 トウヤが代表したように口にし、頷いた。
「この世界はリィンバウムという名前で呼ばれている。そしてここは、リィンバウムの中央北にあるサイジェントと言う街だ。聞き覚えはあるかい?」
「ないですね。リョウは?」
 話を振られたリョウは目を細め、少し考えて口にした。
「聖王都首都ゼラムから西方にある街……で間違いないか?」
「あぁ」
 レイドの返事に、リョウは腕を組んだ。
 ここが、リィンバウムの聖王都ではないかという予感はどうやら当たりだったようだ。
「なんでリョウは知ってるんだよ。知らないって……」
「知らないかもしれないって言ったんです」
 リョウはキッとハヤトを睨んだ。
「まさか本当に帰ってくるとは思わなかったけど、これは認めざる終えないな」
「帰ってくる?」
 ナツミが首を傾げた。
 皆同様の疑問を抱いているのは確かだ。
「俺は元々こちらで生まれた。……色々あって今まであの世界で暮らしていたけどね」
「じゃあ、俺たちは巻き込まれたのか?」
「逆。……完全に、とは言い切れませんが、俺があなたたちに巻き込まれたんです」
 ハヤトの言葉を突っぱねるように、リョウは顔を背けた。
 間に挟まれたトウヤはハヤトとリョウを見比べてため息をついた。

「どうもワシには話がよくわからんのだが?」
 不満そうにエドスが口を開いた。
「俺たちは別の世界から召喚術で呼び出されたんだ」
「あの、召喚術ってなんですか?」
「リィンバウムを囲む四つの世界から生き物であったり、植物であったり、武器であったりを召す力、また術のことだよ」
「召喚師と呼ばれている人間だけがそれを使うことができるんだ」
 リョウの簡潔な内容にレイドが付け加えをした。
「召喚師?」
「怪しげな格好をしている偉そうな連中さ」
 エドスの言葉に否定はしないが、リョウは小さく噴出した。
「召喚主は近くにいなかったのか?」
「召喚主かはよくわかりませんが、人がたくさん……」
「まぁ、見たことのない服装の連中だったのはたしかだな」
 リョウと共に死体の山を見たトウヤとハヤトが沈んだ声で答えた。
「……そうか」
 レイドははっきりと言葉にしていないにも関わらず納得したようだ。
「おそらく、儀式の途中で何かが起きて、そんなことになってしまったんだろう」
 レイドの言葉に、隣に座るナツミが俯いたので、リョウはその背を軽く撫でた。
「……あの人たちが死んでしまったのは私たちの所為なの?」
「そうとは限らない。例えそうだとしても、俺たちは呼ばれただけだ」
「でも……」
「リョウの言う通りだ。気にしすぎないほうがいいだろう」
「……今夜はここに泊まっていくといい。これからどうするかは、休んでから考えなさい」
「ありがとう、レイド、エドス」
 リョウは素直に彼らの申し出を受ける言葉を紡いだ。

 ナツミはどうやら立ち直ったらしく、リョウに視線を向ける。
「リョウ」
「なに?」
「リョウってマジックできるの?」
「ほんの少し齧った程度だけどね」
「すごーい」
「子どもと遊ぶのは慣れてるから」
「お前が子どもだし」
「悪かったね。……むしろ、新堂先輩が子どもっぽくて俺より身長が低いのが悪いんですけどね」
 わざとらしく先輩と付けたことで、ハヤトはさらに機嫌が悪くなったのか、二人の睨み合いは間に挟まれたトウヤがそれはそれは静かに切れるまで続いた。
































夜会話:ナシ☆

 夜も深けてきた頃、リョウは急に目覚めて静かに起き上がった。
 突然のことに疲れたのだろう、同室のハヤトとトウヤは目覚める気配がない。
 枕もとに畳んで置いた学ランの上着を掴み、リョウは静かに部屋を抜け出し、外へと出てみた。
 外へと出た瞬間見えた大きな月を見上げた。
 満ち足りて行くような感覚は一日もたたない前までいた世界では感じることの出来なかったそれをこの世界ではマナと呼ぶ。
 きっと誰もがそれをリョウの身体に纏わりつく光といった形で視覚に感じることはなかっただろう。
 だがリョウはその光を受け入れ、柔らかく微笑む。
「ただいま」
 誰にともなく呟いた言葉の後、リョウは梯子を見つけ、屋根の上に登ってみることにした。

 登りきると、再び月を見上げた。
 あの世界よりも月は大きく見える。
 ポケットからケースに入ったままのサモンナイト石を取り出し、光に翳した。
「……母さん。俺、帰ってきたよ」
 黒いサモナイト石に刻まれた小さな亀裂は決して元には戻らない。
 それを元に戻し、胸のポケットに入れていた無属性のサモナイト石も一緒に入れた。
「看護人形(フラーゼン)を呼んだほうがいいかな……」
 少し考えながら、ケースを片付け大の字に寝転んだ。
 このまま柔らかな光を太陽が昇るまで受けることにしたリョウはゆっくりと目を伏せた。



⇒あとがき
 でた、ヒロインの正体のヒント!
 3をやった人ならわかるはず。
 まぁ、2をやった人でもわかるっちゃわかると思いますがね。
20040502 カズイ
20070413 加筆
res

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