058.あ、なんかバノッサ夢っぽ……いぃ?

「あ、そういえば」
 バノッサの態度をリョウは特に気にせず、ベッドの上のカノンに再び視線を向ける。
「薬飲ませるのに口移しでしたの謝っとくな」
「いえ、別に……」
 カノンは特に気にした様子はなかったが、バノッサが突然立ち上がったのでリョウは思わず首を傾げた。
 バノッサはリョウの腹部に手を伸ばしたかと思うとひょいっとリョウの身体を抱え上げた。
「バノッサ!?」
「ちょっと来い」
「来いって言うか逃げられないし!」
 じたばたと暴れるリョウを抱えたままバノッサはカノンの部屋を後にした。
「……大丈夫かなぁ、リョウ」
 不安になったカノンだったが、取り敢えず何事もない事を信じながら再び眠りの世界に落ちた。
 バノッサの部屋に入ったリョウはベッドに放り投げられると、思わず身体を強張らせた。
「……何もしねぇよ」
 そう言ったバノッサは防具を取るとベッドの中へ入り、リョウの身体を抱き枕の様に抱きしめた。
「な、何!?」
「寝る」
「はあ!?」
 言うが早いか、バノッサは目を伏せるとリョウの身体を引き寄せ直した。
「ちょっと……って、もう寝てるし」
 だが不思議と悪い気はせず、逆にバノッサの心音が心地よくてリョウもうつらうつらと落ちてくる瞼に小さく息を零して観念して睡魔に身を委ねた。






























朝会話:トウヤ☆

 どこに行っていたのかは知らないが、レイドとエドスが知っていて黙認しているんだからあえて詮索はしない。
 けど朝帰りって何をしていたんだろう、とどうしても気になってしまうものだ。
 ソルの看病で下に降りなかったからそこの辺りはよくわからないんだよなぁ。
 まあ広間でその話をしたみたいじゃなかったけど。
「おはよう、トウヤ、ソル」
「おはよう」
「おはよ」
「元気そうでなによりだ」
 ソルに向けてリョウが微笑む。
 なんと言うか……こう、雰囲気がいつも以上に穏やかだなぁと感じる。
「何処に行ってたんだ?昨日の夜居なかったらしいけど」
「内緒。言ったらレイドに怒られる」
「お使い?」
「そうじゃないけど……」
 いたずらっ子の様な笑みを浮かべたリョウは何故かソルに飛びつく様にして抱きついた。
「うわっ、なんだよ!」
 なんだか甘えるようにすりっとソルの胸に額を押し付けたリョウは少し思案顔を浮かべた後、今度は僕に抱きついてきた。
「どうしたんだい?」
「……なんか、違う」
 分からないと言った表情のリョウは僕から離れた。
「何がしたかったんだよ」
 呆れ顔のソルに言われ、リョウは眉根を寄せながら首を傾げる。
「側に居ると落ち着くんだ」
「誰が?」
「俺が。……トウヤとソルに抱きついてもそう思わないのに、なんでだろう」
「リョウ、鈍いって言われない?」
「昨日アヤに言われたし、皆タイミング合わせたように溜息吐いた。……俺ってそんなに鈍いか?」
「鈍いよ」
「鈍いな」
「ソルまで!?」

 しょんぼりと落ち込んでしまったリョウ。
 よくよく考えてみると僕とソルが付き合ってるって皆流石に気付いてるのに、リョウだけが気付いてないんだよなぁ……
 本当、鈍いなぁ。リョウって。



⇒あとがき
 いつから付き合ってたとか、詳しい経緯は深愛で書くからできるかぎり省きたい。
 でも、話の進行上、たくさん出てくる。
 なぜなら、トウソルは、夢主にとっての保護者のような存在だから(笑)
20040612 カズイ
20130518 加筆修正
res

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