052.憧れる強さ

「モナティ、もう泣かないでください」
 えっぐえっぐと嗚咽を零しながら泣き続けるモナティの頭を撫でながらアヤがそう声を掛けた。
「団長さん、モナティのこと、いらないって!失敗ばかりしてるから、いらないって……」
「きゅーん?」
 ガウムがモナティの顔を覗き込んで小首を傾げた。
「ごめんね、ガウム。モナティのせいで、はぐれになっちゃったのですの……。も……ひっく……どこへも……っ、帰れな……」
 モナティはガウムに謝罪しながら自分を責めていた。
 自分を利用し、更には売ってしまおうとしたサーカスの団長を責める事は一切しなかった。
 本当に純粋なまでにサーカスの団長を信じていたのだろうことがモナティの言葉からは感じられた。
「モナティの所為ではありませんよ。モナティは一生懸命やってきたんですよね?悪いのはモナティじゃないですよ」
「ううっ……ありがとう……」
 涙を一杯に湛えた瞳で、モナティはアヤを見上げ、そして突然アヤに抱きついた。
「ありがとうですのっ、ご主人様〜っ!!」
「え?ちょ、ちょっと……?」
「嬉しいですの……ご主人様……」
 涙声で、モナティはそう呟き一層その腕の力を強くした。
「きゅーっ!」
 ガウムが一声鳴く声を聴きながらアヤは眩暈を覚えて一瞬意識を失いかけたのだった。






























夜会話:アヤ☆

「……ご主人様、と言うのは流石に遠慮してほしいですね」
 昼間の出来事を思い出して溜息を零し、私はは空を見上げました。
 初めてこの月を見た時と同じ感想を言える程月は私に何かを訴えかけるように輝いています。
 これが、リョウの言うマナの力と言う物なんでしょうか……
 ハヤトにリョウならここに居るんじゃないかと言われて来たのに当のリョウは此処には居ませんでした。
 普段なら自分から足を運ぶ事のない屋根の上にまで来たのにと思わず肩ががくりと落ち、再び溜息が零れます。
「はぁ……」
「よ」
「?」
 不意にひょこりと顔を出したのはリョウでした。
 梯子を伝って登ってきたリョウに思わず眉根が寄って、恨みがましく見てしまいました。
 どこに居たんですか、リョウ。
「部屋に戻ったらアヤが探してたって聞いたんだよ」
「すいません」
「何で謝るんだ?」
「えっと……なんででしょう?」
 自分が言ったのに何故だかは上手く説明が出来ず首を傾げてしまいました。
「ま、いいけど」
 そう言うとリョウは高さなど気にした様子もなく私の横に座り、私がさっきまでそうしていたように空を見上げました。
 リョウがすうっと空気を吸い込むと不思議な光―――これがマナなんでしょう―――がリョウの身体に纏わりついたかと思うと息が吸い込まれるようにリョウの中へと吸い込まれていきました。
 不思議な光景に思わずほうと溜息を零せば、リョウが視線を私の方へと向けました。
「で、何の用?」
「……私たちは、モナティと一緒なんでしょうか」
「?」
「だったらご主人様と呼んでもらっているのはどうかと……」
「それは、同じはぐれだからって事?」
「ええ」
「複数に呼ばれたからすぐに還る事は出来ない」
「それは、わかっています」
「だけどカシスたちが居る」
 リョウはふわりと月の光みたいに優しい、けど、儚い笑みを浮かべました。
 その笑みは、今日あの時、ほんの一瞬だけ見せたあの笑みでした。
「だからアヤは還れる。そうしてくれるはずだよ」
「リョウは」
「ん?」
「リョウも一緒に帰れますか?」
「……どうだろう。一応最後は誓約を解いて貰う心算だけど、本当の"ご主人様"は此処に居ないから」

 そう言って寂しそうな笑みを浮かべたリョウを見ていられなくて、私は何故か泣き出してしまいました。
 リョウはどうしてそんなに強がれるんですか?
 私は無理です。リョウみたいに強くなれません……




 本当のご主人様は2にならないと出ませんよね。
 あぁ、早く出していちゃいちゃさせたたい!!!(バノッサやハヤトはいいのか?私)
20040603 カズイ
20130518 加筆修正
res

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