039.勘違い

※強姦未遂表現有。読み飛ばし可

 カノンの身体をベッドに横たえ、リョウはほっと息を吐いた。
「おい」
 バノッサがリョウの肩を掴んだ。
「うっ」
 怪我を確かめるようにそっと触れはしたが、痛みにリョウは眉根を寄せた。
 手を離すと、怪我をしていないほうの腕を引いて歩かされる。
「ちょっ、バノッサ!?」
「うるせぇ、黙ってろ」
 バノッサに腕を引かれるまま、廊下の奥の部屋へと連れて行かれる。
 部屋の中は閑散としたもので、特に物はない。
 あるとすればベッドと机と本棚くらいのものだ。一応生活感は見受けられる。
 そのベッドに座らされ、リョウはバノッサを見上げた。
「バノッ……わっ!」
 問答無用でバノッサはリョウの上着を剥ぎ取った。
「あぁ?なんで怪我がねぇんだ?こんなに血まみれなのに」
 上着とリョウの肩を見比べる。
 白い肌には傷など見当たらなかった。
 それもそのはず、先ほどバノッサが触れ、離れたころに傷は癒されていたのだから。
 しかしその理由をどう説明していいものかと俯いて考える。
「ほせぇし」
「バノッサと比べるな」
 それにしても細い、とバノッサはリョウの腕を再び掴んだ。
「カノンでももう少しあるぞ?」
「そうなんだ」
 バノッサに掴まれた腕を見つめ、男女の違いだから当然だろうとリョウは納得する。
「……なぁ」
「ん?」
「お前も、召喚術使えたよな」
「一応ね。それがどうかした?」
「教えろよ」
「ヤダ」
「なんで……」
「バノッサはそれを力として使うだろう?」
「当たり前だ!」
「だから出来ない」
「なら教えるって言わせるまでだ。まぁ、男相手なんてしたことねぇけどな」
 バノッサは傷が癒えたリョウの肩を押し、ベッドへと押し倒した。
「は?俺は……んっ」
 バノッサの唇がリョウの唇に重なった。
「んむ……あ、ふ……んん」
 呼吸が出来ないと薄く開いた唇から舌が侵入してくる。
 リョウはバノッサの肩を叩くが、次第に覚える眩暈に力が弱まる。
「っは……はぁ、はぁ……」
 ようやく唇が離れると、リョウは必死に息を吸い込もうと真っ赤な顔を隠すことなく深呼吸を繰り返す。
「鼻で息すんだよ、ガキ」
 リョウが疑問を抱いている間に、バノッサはリョウの服に手を掛けた。
 赤茶のベストはチャック一本で簡単に開いた。
 平らに近くある胸ではあるが、そこにたかすかなふくらみがあるのが判る。
「てめぇ……女だったのか」
 バノッサは一瞬目を見開いたが、すぐににやりと笑い、リョウの胸に手を這わせた。
「ひっ、やっ……」
 リョウの脳裏に深紅の記憶が過る。
 それと同時に唐突に身体が強張る。
 脳裏を支配する感情はただ一つ―――恐怖。
「やめっ……やだ!やだ!!」
 流石にリョウの様子がおかしいことに気付いたバノッサは、リョウから手を離した。
「ひっ……く……ぁ」
 小刻みに身体を震わせ、まともに息すら出来ないリョウの身体を抱き起し、その背を撫でた。
「……もうしねぇよ」
「ふっ、ぇ……怖い……こわいよぉ」
 力無く泣きだしたリョウはバノッサの腕の中で小さく丸まりこんだ。
「もうしねぇ」
 リョウはきつくバノッサに抱きつく。
 優しく背を撫でる手と耳に届く心音がリョウの気持ちを落ち着かせる。
「宮司じゃなくて巫女だったってことか」
「巫女、じゃ……ない」
「ああ?」
「……たぶん」
 嗚咽交じりに頼りなげに付け足した。



⇒あとがき
 私の暴走大爆発!!!
 あぁ、大好きだー!!バノッサさん万歳!!!
20040524 カズイ
20090825 加筆修正
res

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