037.シルターンのシノビたち
賞金首を捕まえたリョウは賞金を受け取り、フラットへ戻ろうとしていた。
「お師匠に叱られるうぅぅぅっ!!」
その時、道の角の方から聞こえた声に嫌な予感がしたリョウは咄嗟にそれを避けた。
だが相手も早かったらしく、微かに手が当たってしまった。
その時どうやら相手のポケットからはみ出していたらしいお守りが落ちてしまったらしい。
「あ……」
止める間もなく、少女は走り去って行ってしまっており、リョウは仕方なくお守りを拾って、彼女から感じた気を頼りに少女を追いかける。
常人ではない早さではあったが、馬ほどではないしとリョウはくすりと笑った。
「薬処、あかなべ?」
首を傾げながら、到着地点らしい場所に掲げられた看板の文字を見上げた。
それは名もなき世界にあった文字に酷似しているシルターンの文字だった。
中からはさきほどの少女のものと思わしき聞こえてくる。
「―――すみません」
声を掛けて店の中に入る。
そこは薬屋なのか、独特の匂いがまず鼻についた。
そしてその店の中には店主らしき青年と、さきほどの少女がいた。
「いらっしゃいませ」
「あの、これ」
リョウは少女の前まで歩み出ると、彼女の前にお守りを差し出した。
少女はそれを両手で受け取ると、小さく「あ」と声を零した。
「落しましたよ。さっき曲がり角でぶつかりそうになった時に」
「あぁ!ありがとう!!」
「同郷の好ってヤツですよ。くノ一のお姉さん」
少女が顔を引きつらせる。
「何か?」
「私、言ってないよね」
「足抜きで。気付かれたくなかったらもう少し気をつけた方が良いかと……同郷なら多少は気づきます」
「まだまだ修業が足りませんね」
少女は小さく紡がれた青年の言葉に怯えたように肩を揺らした。
「ああ、あなたもシノビだったんですね」
「……私も修業が足りませんかね」
自分の失言に気付いた青年は苦笑を浮かべた。
「私はシオンです」
「俺はリョウです。祖母がシルターンの巫女でした」
「そうですか。なら、お礼にこれを貰っていただけますか?」
シオンはリョウに三日月の形の銀の道具を渡した。
重くはないが、軽くもない。また軽すぎない。
三日月の端と端を繋ぐように一本の棒があり、そこが握り手の部分とみて間違いないだろう。
下方にあたる部分には白い布地で三本、赤い布地で一本紐のようなものが一メートルほど流れている。
「巫女でなければ利用価値のないものですから」
「もらえません」
「貰ってください。その代わり、薬処あかなべをご贔屓にしてください」
「俺は薬とは無縁だろうけど……ガゼル辺りならいるよな。……はい、できるだけそうします」
カノンがオプテュスにいるということを考えれば、いずれ必要になるかもしれない。
そう考え、リョウはそれを受け取ることにした。
リンッとそれは鈴の音を僅かに響かせた。
⇒あとがき
やったー!!
やっとシオンさん出せたー!!
20040523 カズイ
20090825 加筆修正
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