019.トウヤの特技?

「なんでだろうね、この釣果」
 腰に手を当て、呆れたようにリョウは各々の釣果である宝箱7つと大物三匹と普通の魚四匹を見つめた。
 その隣ではトウヤはがっくりと項垂れていた。
 釣果のうち、宝箱はすべてトウヤの釣果である。
 入れ食いは入れ食いでもすべて宝箱というのはいかがなものだろう。
「開けるよ」
 リョウは宝箱に手を伸ばし、宝箱を開けていく。
「うわ……あ、これも……これも……これもだ」
「なんでかなぁ……」
「全部サモナイト石セットって、逆にすごいね」
「……別にいいけどさ……いくらなんでも多いよ」
 セットと言うだけあって、7×5の35個。
 トウヤはそれを見つめてため息をついた。
「別にいいんじゃない?」
 リョウは機属性のサモナイト石を選び、予備の空ケースにそれを一つずつ埋めていく。
 一箇所だけ空きを残したままのそれをトウヤへと差し出した
「はい」
「え?」
「持っておいたほうがいいだろう?いざって時の誓約用」
「僕、詠唱知らないよ?」
「大丈夫、トウヤなら詠唱無くても召喚できる。機界の皆は割と命令に弱いってのがポイント」
「命令?」
「そう。機械だから」
 リョウはにやりと笑い、紫を二つコートのポケットへ入れ、残りは持ってきていた袋へと押し込んだ。
「空きにライザーを入れて置いてあげたらいいよ」
「そうだね、そうするよ」
 納得したトウヤはそれを受け取り、隙間にライザーを居れてポケットの奥へと収めた。
「さて、帰るとするか」

  *  *  *

「あれ?ハヤト?」
 入り口でハヤトが扉の傍に背を預けて立っていた。
「おかえり」
 ハヤトは身体を起こし、リョウたちを出迎える。
「何かあった?」
「いや……あのさ、俺たちが来た場所に行ってみないか?」
「っていうと、あの場所?」
「ああ。アヤとナツミには話した。一応見てみようって……」
「僕も行ってみたいとは思うけど、どうする?リョウ」
「別にいいけど……行くのはレイドとガゼルとトウヤと俺と新堂さんだけ」
「なんで?」
「ここの守りも残さないとだろ?しいて言うならアヤが一番魔力のコントロールがうまい。ナツミとエドスが援護に回れるから集中力さえあれば大丈夫」
「確かに」
「後もう一つ。外ははぐれが出る。女の子を危ない目に遭わせるなんて出来ないだろう?」
「まぁ、そうだけど……」
「そういえば、はぐれってなんなの?ずっと聞きそびれてたけど」
「……前の世界で言えばモンスターって奴だよ。まぁ、滅多に会うことはないでしょうから不安がることはありませんよ」
「べ、別に不安じゃ……」
 うろたえたハヤトを見て、リョウはにやりと笑った。
「出たとしてもあなたたちに手出しはさせませんよ」
 ぽんとハヤトの肩を叩き、リョウは中へと入った。
「ただいま、リプレ」

「心強いね」
「トウヤ」
 僅かに怒ったようなハヤトの声にトウヤは肩をすくめて見せた。
「……あのさ」
「なんだよ」
「いや、なんでもない」
 トウヤは不思議な感覚を口に出さず、リョウの後を追いかけた。
「そう言えば釣果は?」
「……………」
「トウヤ?」
「まぁ……見てのお楽しみ?」
 トウヤは苦笑を浮かべるばかりだった。



⇒あとがき
 吐血!めら短いよ!!
20040511 カズイ
20070603 加筆修正
res

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