016.ナガレ、テテ召喚!

「次、あたし!今度こそあたし!」
 ナツミが片手を挙げて主張する。
 アヤはその隣で苦笑を浮かべた。
「人生の賭けですって言われてもやる?」
「うっ」
「冗談。シルターンもメイトルパも誓約出来るから、先に俺がやるよ」
 笑みを浮かべ、リョウはトウヤからシルターンのサモナイト石を受け取った。
「リョウは霊属性じゃないの?」
「トウヤ、いいところに気が付いたね。うん、メイトルパはちょっと自信が無いけど、一応全ての属性と誓約ができるよ」
「ふーん」
「がんばればリョウみたいに全属性できるようになるの?」
 ナツミの問いに、リョウは苦笑を浮かべ、答えなかった。

「古き英知の術と、我が声によって今ここに召喚の門を開かん。我が魔力に答えて異界より来たれ。新たなる誓約者、リョウが願う。呼びかけに答えよ。―――ナガレ!」
「かっぱ!」
 サモナイト石がリョウの言葉に反応し、キュウリを手にした召喚獣―――ナガレが光がはじけるのと共に現れた。
「きゅうり?」
「きゅうりですね」
「かっぱ?」
「もどき?……皿が、ちょっと……」
 上からハヤト、アヤ、ナツミ、トウヤだ。
「アヤ、ナツミ、これはどうかな」
「私読めます」
「あたし才能なし!?」
 リョウが差し出したサモナイト石を見てアヤはほっと胸を撫で下ろし、ナツミは肩を落とした。
「まだメイトルパがあるよ」
 リョウは慰めの言葉をかけながらナガレを送還し、それをアヤに渡す。

「さぁ、召喚してみようか」
「はい」
 アヤの手をリョウはそっと包み込んだ。
「ハヤトとは少し違うけど、要領は一緒だよ。さっきのナガレを覚えてる?」
「ええ、大体……ですけど」
「十分だよ。ナガレを思い浮かべながら、目を閉じて」
 指示に従って目を閉じる。
「門が見えます」
「門に呼びかけて……"おいで"って」
「……ナガレ」

「かっぱ!」

 光がはじけ、ナガレが再び姿を現した。
「私にも、できるんですね」
「アヤの魔力は綺麗だから。うん、慣れればきっと龍神も応えてくれるよ」
「かっぱぁ!」
 同意するようにナガレがきゅうりを掲げた。
「さぁ、送還してあげて」
「はい、ありがとうございました、ナガレさん」
「かっぱ」
 気にするなというようにアヤの足を軽く叩き、リョウに頭を下げてから送還されていった。
「今、頭下げられ……」
「さて、次はナツミだね」
 ハヤトの言葉を遮り、リョウは音を立てて両手を合わせた。
「え、あ、うん」
 その音に驚いたのかナツミは頷いた。
「メイトルパの可能性しかないから覚悟しないとね」
「うっ……」
「はは、大丈夫だよ。俺もメイトルパは初めて」
「そうなの?」
「うん。だからついでに協力召喚をしてみようか」
「協力召喚?」
「そう。二人で一緒に魔力を練って召喚をする」
「そ、それって難しくない?」
 リョウからメイトルパのサモナイト石
「俺の負担大きくすれば大丈夫。じゃあ、俺の言葉に続いて」
「えぇ!?」
「古き英知の術と我が声によって」
「古き英知の術と我が声によって」
「今ここに召喚の門を開かん」
「今ここに召喚の門を開かん」
「我が魔力に応えて異界より来たれ」
「我が魔力に応えて異界より来たれ」
「新たなる誓約者リョウが願う」
「新たなる誓約者ナツミが願う」
「呼びかけに応えよ」
「呼びかけに応えよ」
 続きをすぐに口にしないリョウに不安になりながらも、ナツミは目の前に見える気がする門を見据えた。
 その扉を開いてこちらを見ている召喚獣がいる。
(呼んであげよう)
 そう言うリョウの声が聞こえた気がした。
「「テテ」」
 自然とその名前が浮かび、呼びかけた。

 目の前に見たことのないペンギンのような召喚獣がそこにいた。
「テテ?」
 そうだとでも言うように短い手で腕組みし、胸を張るテテに、ナツミは安堵し、そのままふらりと倒れた。
 リョウはその体を慌てて抱きとめ、ため息をついた。
「ナツミ!?」
「大丈夫だよ、アヤ。魔力の加減を間違えただけだから」
 ナツミの手を解き、サモナイト石を手に取った。
「加減?」
「最初だったしね。ナツミって大雑把にすまそうとするところない?」
「えっと、少し」
 アヤは苦笑しながら答えた。
「だろうね」
 リョウも笑みを浮かべ、ナツミの体を横抱きに抱え上げた。
「悪いな、テテ。すぐには還してやれない」
 気にするなというようにテテはリョウの足をぽんぽんと叩いた。
「……気にしないならいいけどさ」
 リョウはゆっくりと歩き出した。



⇒あとがき
 女の子二人まとめちゃいました。
20040509 カズイ
20070524 加筆修正
res

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