014.ライザー召喚!
「……増えたな」
「……増えたね」
リョウはしみじみとトウヤと一緒に、剣で素振りをするハヤトと、少し離れた場所で短剣を同じく素振りするアヤとナツミを見た。
「リョウはしなくていいの?」
「朝やってきたよ。……それよりも、サモナイト石は持ってきた?」
「持ってきたよ」
皆が持ってるからと言うトウヤに、リョウは三人を集めた。
四人は、それぞれサモナイト石を取り出した。
ハヤトは赤。
トウヤは紫。
アヤは緑。
ナツミは黒。
リョウはそれを受け取り、そっと魔力を注ぎ込んだ。
すると四色の淡い光がそれぞれの石を柔らかく包み込む。
「え?なに!?」
「魔力の呼応だよ。適性を診断する方法の一つだよ」
リョウは足元に四つの石を正方形の陣形を作るように置いた。
四人はリョウにあわせてしゃがみ込み、それを覗き見た。
リョウは折れた枝を拾って、それぞれの石を円で囲んだ。
中央に無人の輪を作り、最後に五つの輪から外れた位置にもう一つ円を描いた。
外れた輪の上に、ケースから透明な石を取り出して置いた。
「ここ、リィンバウムの周囲を四つの異世界が取り巻いている構図になっているのは図からわかると思う」
とんとんと中央の円を枝で示す。
「この世界に存在する魂は、リィンバウムの外の四つの異世界を輪廻し続けている。リィンバウムはこの輪廻から外れた位置にあって、何らかの理由で輪廻の輪からこぼれた魂がリィンバウムを形作っているんだ」
「難しい……」
「つまり、リィンバウムはこの四つの世界と違うということだろう?」
「簡単に言えばそういうこと。そう言うことから、リィンバウムは『選ばれた高潔な魂が集う楽園』とも『転生の価値を失った魂の彷徨う場所』とも呼ばれることがある」
「正反対の呼ばれ方ですね」
「両極端な例だからな。……じゃあ、四つの世界の話に移るよ。まずはトウヤが召喚したポワソや、俺の居るべきはずの世界」
紫のサモナイト石を示し、四つの視線が一斉にそこに集中した。
「霊界サプレスって言う名前は、昨日の話の中で聞いたと思うけど、サプレスは天使や悪魔、亡霊や、妖霊など"霊的な存在"が集まる世界なんだ。この世界の住人は実体を持たない精神構造体。肉体を持つ生物とは異なる」
「リョウは?」
「俺の場合は混血だからね。他のサプレスの住人は、その身体を長時間保つことは難しいとされている」
「どうして?」
「マナと言って、肉体を保つために必要な魔力がなくなってしまうからだよ」
「マナってどうやって手に入れるんだ?」
「例をあげるなら月です。月はたくさんのマナを放出しています。ただしその原理は未だ解明されていません」
ハヤトの質問に淡々と答え、次に赤い石を示す。
「新堂さんが持っていたこのサモナイト石は、鬼妖界シルターンと呼ばれる世界とを繋ぐサモナイト石。シルターンは四つの異世界の中で唯一リィンバウムの人間に近い姿をした人々が暮らしている世界。人間以外にも妖怪、物の怪、鬼、龍などの住人が居る。強大な力を持つ龍神や、鬼神を宥めるために、巫女や宮司なんて職業もある」
「へぇ……」
「なんだか私たちの世界と変わらない感じですね」
「うん、そうだね。文化は日本に近い者があるよ。侍や忍もいるんだ」
「なんて言うか、昔の日本って感じかな?」
「そんな感じ」
くすっと笑い、次は黒のサモナイト石を示した。
「ナツミが持っていたこのサモナイト石は、機械ロレイラルと呼ばれる世界とを繋ぐサモナイト石。ロレイラルでは機械文明が発達していて、意思を持った機械たちが暮らしている。この世界は"機械兵士"などの強力な兵器を使った"機界大戦"によって荒れ果てて、生物はほぼ絶滅してしまってる」
「ほぼってことは、まだ生きてるってこと?」
「ああ。……けど、もう片手ほどしかいないだろう」
「え?」
「冷凍睡眠をして生き長らえるしかないんだ。だから、正確な数はわからない」
苦笑しながら、リョウは四つの中で最後の一つ、緑のサモナイト石を示した。
「アヤが持っていたこのサモナイト石は幻獣界メイトルパと呼ばれる世界とを繋ぐサモナイト石。自然に溢れていて、幻獣や精霊が住んでる。それから、獣の特徴を持つ"亜人族"がいる」
「メイトルパの説明は少ないんだね」
「メイトルパはあまり詳しくないんだ。……さてと、簡単に説明が終わったところで適性を見るとしようか」
「ちょっと待てよ。これは?」
ハヤトが無色のサモナイト石を示した。
「あ、忘れてた。……これは無属性。どこにも属していないんだ。だけど、あっちの世界を示しているかもしれないという説がある」
「俺たちの世界?」
「そこを、この世界では名も無き世界と呼んでる」
「名も無き……世界」
「解明されてない世界だからしょうがないんだ」
「それにしても、リョウって本当この世界に詳しいんだね」
「まぁ、ね。それじゃあ、適性検査しようか」
言葉を濁したリョウに、四人は深くは尋ねなかった。
何か事情があるのだろうことがその表情から判ったからだ。
「トウヤからにしよう」
五つのサモナイト石を持って、その中から黒のサモナイト石を迷い無く選んだ。
トウヤの手にリョウはサモナイト石を乗せ、自分の手を重ねた。
「最初だから目を閉じるといい」
「ああ」
「ポワソを召喚したときを思い出して、サモナイト石に集中して」
トウヤが目を瞑ると、淡い光がサモナイト石を覆う。
「なにが見える?」
「門、かな?……前のときより綺麗に見える」
「そう、そのまま呼びかけて……なにが見える?」
「丸い……手がある?……えっと、羽?」
「名前を呼んであげて」
「呼ぶ?」
「名前だ、その子の」
トウヤは短い沈黙の後、その名前を告げた。
「……ライザー」
トウヤの呼び声に答えるように、光が弾け、召喚獣が姿を現した。
「ヴォンッ……」
嬉しそうな機械音が響き、ライザーはトウヤに擦り寄った。
「やっぱり機界属性だったな」
「わかるものなのか?」
「この間のでそう感じたんだ。問題は残りの三人なんだよなぁ……判断材料が無いから」
リョウはナツミ、アヤ、ハヤトを苦笑しながら順番に見つめた。
⇒あとがき
ですから、1は未プレイです。
よって、どんな召喚獣がいるとか知りません。
どうやらライザーはいるようですが、ぶっちゃけリプシーがわかりません。
3にはいなかったような気がするし……ま、気にしなーい!
20040509 カズイ
20070422 加筆修正
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