012.チームフラットへようこそ

「で、説明。……ちゃんとしてくれるんだろうな」
「……俺がリィンバウムの人間じゃないって、気づいてるんだろう?」
 ガゼルの質問に答えず、レイドに向けてそう言った。
「ああ。リィンバウムの人間は召喚されるはずが無い」
 レイドの言葉に、リョウは肩を竦めて見せた。
「やっぱりレイドだけか、わかってたのは」
「リプレは驚かねぇんだな」
「だってリョウから聞いてるもの」
 さも当たり前のようにガゼルに返したリプレに、はぁ!?とガゼルは驚きを示す。
「"バノッサ"という名はあのクソ野ろ……俺の親父が人間の振りをするときの偽名で……それでさっきはかあっと来て」
「我を忘れたと」
「その通り」
 エドスの言葉に、リョウはこくりと頷いた。
「それにしても、人間の振りというのは……」
 レイドの言葉に、リョウは視線を泳がせた。
「……レス」
「?」
「霊界サプレスの召喚獣なんだ。リプシーと同じ世界の」
「「「「ええ!?」」」」
 リプシーと同じ世界という言葉に、トウヤたちは驚きに声を上げた。
「振りをしたということは高位の召喚獣だね」
「ああ。あんまり言いたくないんだけどな……一応、大悪魔の血を引いてる」
「だから憎らし……」
 余計なことを言おうとしたハヤトの口を、トウヤが慌てて塞いだ。
「何か言った?」
「なんでもないから気にするな」
 トウヤが弁解し、ハヤトは文句を言おうとしたが、トウヤに睨まれたのでやめた。

「大悪魔と悪魔ってなにか違うんですか?」
「例で上げれば、大悪魔メルギドス。悪魔を統べる悪魔の中の悪魔だよ。向こうで言うなら魔王が近いかな」
「ま……魔王ぅ!?」
「結局は別物だけどね」
「メルギドスは大物中の大物だな」
 レイドの言葉に、リョウは苦笑を返した。
 どの大悪魔か名を言わないほうが良さそうだ。
 リョウはそう思って自己完結した。

「まぁ、それは置いておいて、問題はこれから先のことでしょう?」
 リプレがぱんと手を合わせ、話題を変えてくれた。
「ガゼル一人じゃ心細いし、できたらこのままいてほしいって思うんだけど」
「それって私たちですか?」
「そう!」
 リプレがうれしそうにアヤに笑顔を向けた。
「リョウは四人の判断に任せるみたいだけど、皆はどうしたい?」
「彼らを困らせるんじゃない。彼らには元の世界に戻ると言う目的が……」
「何の当てもなしにか?」
「うっ、それは……」
 ガゼルがレイドを黙らせ、四人の顔を見ていく。
「帰る方法がみつかるまででもいいんだよ。なあ、それじゃだめか?」
「あたしはいいよ」
「私も」
 ナツミもアヤも軽く返事を返した。
「じゃあ、僕も」
「……俺も」
 ようやく解放してもらったハヤトが息もキレギレに、片手を上げて机に突っ伏した。
「なら、俺も……いいかな?」
「一番いてほしいわ」
「それはリプレだけだって。……皆居てほしいに決まってるだろう」
 にっとガゼルが笑った。

「こんなに人数が増えて迷惑じゃないかな?」
 不安そうにトウヤが問う。
「ああ、問題ない。人数が増えるってだけでも、安心だしな。ワシは歓迎するぞ」
「ふふっ。子どもたちに話したらきっと喜ぶわね」
「よし、そうと決まればお前も俺たちの仲間だ。遠慮はなしでいこうぜ?」
「やれやれ、そういうことならば、改めて挨拶をしないといかんな」
 エドスは頷いて、リプレは微笑む。
 ガゼルはにっと笑って、レイドは苦笑した。

「「「「チームフラットへようこそ!」」」」






























夜会話:トウヤ☆

 少し肌寒い風に毛布を巻きつけ、月を見上げる。
 向こうの世界では見ることの少なかった月。
 このリィンバウムの月は向こうの世界よりも大きくて、なんだか落ちてきそうだ。
 思わず自分の想像に思わずくすりと笑った。
「ここにいたのか」
 不意に掛ってくるとは思わなかった声がかかって、梯子のほうへ視線を移した。
 声から想像は出来ていたけど、リョウだった。
「隣いい?」
「どうぞ」
 僕みたいに毛布を持ってきているわけではないけど、黒の学ランを羽織っている。
 隣に座ったリョウを見ると、リョウの身体が発光しているように見えて、目を擦った。
「なんだ……それ」
「あぁ、これはマナだよ」
「マナ?」
「サプレスの住人が生きるために必要な生命力の一つ」
「え?」
「大丈夫。無くても生きていけるよ。俺は人としての実体があるから」
「へぇ……」
 食事と言えば、リプレのご飯は食費が少ないという割に量も多くて美味しかった。
 仲間になったんだからと言って、夕食後の片付けは橋本と樋口が手伝った。
 僕とハヤトもなにかしないとなぁ……
「トウヤはどうしてここに?」
「……悔しくて」
「悔しい?」
「リョウに守られてるじゃないか。それがなんか、なんか悔しくってさ。……僕は強くなりたい」
「心が?力が?」
「力、かな。心はついていこうとしてる。でも、それを補える、実戦で戦う力は……無い」
「ああ、剣道……やってたんだっけ?」
 ふっと剣道で思い出したけど、香坂しぐれと同じ道場なんだっけ。
「リョウは剣道やってないかい?」
「剣道はね。実戦の剣術は教えてもらったことあるよ。俺でよければ教えてあげられるけど」
「いいの?」
「もちろん。ついでにハヤトも誘っておけよ。あいつ俺から誘っても絶対に来ないだろうから」
「仲悪いみたいだけどいいのかい?」
「生きていくために必要だろう?」
「まぁ、それもそうだね」
「だったら、なりふり構えない。……ハヤトは嫌いだけど、同じ仲間だから譲歩するよ」
 譲歩するだけマシということだろか。
 僕は軽く「そう」と相槌を打った。
 リョウはクツクツと笑いながら月を見上げる。

 線が細くて中世的。
 良く見ると綺麗な顔してるんだな、リョウって。
「女の子によく間違えられない?」
 不意に口をついた言葉。
 リョウは目を瞬いている。
 図星だったかな?
「よく見れば中性的だから、そう思ったんだ。気分を害したならごめん」
「いや……気づかないものなんだな」
「え?」
「なんでもないよ。さ、部屋に戻ろう。明日に響くしな」


 年下だけど、相談しやすいなぁ……リョウって。



⇒あとがき
 えー、おじいちゃんは○○○○○。←バレバレ☆
 加筆した際になんとなく伏せて見ました。
20040505 カズイ
20070421 加筆修正
res

×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -