18.5.不幸引受少年
先ほどまでサクラに掛けていたまだぬくもりの残っているコートを麻里亜に掛け、ファイは顔を上げた。
視線のあったサクラはきょとんとし、首を傾げた。
「あのね、サクラちゃん。これからどんな旅になるか分かんないけどさぁ、記憶が揃ってなくて不安だと思うけど楽しい旅になるといいよね。せっかくこうやって出会えたんだしさ」
「はい」
サクラはファイの言葉に笑みを浮かべて応えた。
「まだ良く分からないことばかりで足手まといになってしまうけど、でもできることは一生懸命やります。よろしくお願いします」
ぺこりとサクラは皆に向けて頭を下げた。
「そういえば、湖の中だいじょうぶだったー?すっごい光ってたけどー」
「あ!」
小狼は湖の方を指差して言った。
「町があったんです!」
「はぁ?」
「「え?」」
小狼は潜ったときのことをファイたちに説明した。
「なるほどーこの国の人たちは湖の中にいるんだねー」
「強い力。このウロコから出てる力と同じ」
モコナは小狼が持ってきたウロコをファイの肩から見下ろす。
「ということは姫の羽根は……」
「これ以外に強い力感じない」
「ないってことかー」
「うん」
「無駄足かよ」
詰まらなさそうに黒鋼は欠伸をした。
「でも小狼くん楽しそう」
「まだ知らなかった不思議なものをこの目で見られましたから」
小狼は微笑みながらゴーグルの中に溜まった水を落とした。
ウロコは砕き、袋につめた。
とりあえずは小狼の服が乾いてから行こうということになった。
「次はどんなところかなぁ」
「知るか!白まんじゅうに聞け!」
「……そう言えば、麻里亜さんどうしましょうか」
「「俺(オレ)が……」」
そこまで言って、黒鋼とファイは顔を見合わせた。
その間には激しい火花が静かに飛び散ったようにも見えた。
「私が運びます!」
「姫、さすがに同体格の女性を運ぶと言うのは……」
「でも姉さまは昔私を」
「何年前の話ですか」
小狼はがくっと肩を落とし、無意味な争いのようなそうでないようなものに終止符を打つべく口を開いた。
「……おれが運びます」
⇒あとがき
なんとなく書いてみました(笑)
姉さまの話はなんとなく最近ぱっと浮かんだので、後々どういう影響が出るか……(汗)
20050429 カズイ
20070722 加筆修正
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