□Kin Of Beelzebub

※時間軸、高1の5〜6月頃

「あれ?燐はダメだったの?」
 しえみの言葉に燐はじっと見つめていた魔法円の略図が描かれた小さな紙から顔を上げた。
「あ、いや……」
「血が落ちてないからまだだよね?」
 にこりと微笑んだしえみに燐はぐっと詰まりながら再び魔法円を見つめた。
 幼い頃から祓魔塾の中をこっそり出入りしていた燐は、小学生の時既に手騎士としての素養有りとして蝮に魔法円に関しての知識を与えられていた。
 もちろん知識だけでなく素養があったのだから悪魔の召喚だって出来る。
 ただ問題があるとすれば一つだけ。
 ちらりと燐は素養がないと諦めている京都出身の三人組を見つめた。
 燐の視線に真っ先に気づいた子猫丸がにこりと返してくれたので燐は苦笑を返し、その横にいる廉造を見た。
「?」
 燐の視線に気づいた廉造は当然首を傾げ、子猫丸を挟んで反対側に立っていた竜士はいつものように不快そうに眉根を寄せた。
「あー……先に謝っとく」
「なんですの」
 燐はそれだけ言って魔法円に自らの血を落とした。
「"ベルゼブブの眷属よ、我が前に姿を現すことを許す"」
 燐が思いつく言葉の意味を察した竜士と子猫丸は思わず目を見開いた。
 八候王[パール]に関して勉強量が足りていない廉造は当然そんな反応をした二人に首を傾げたが、すぐにさっと表情を青ざめさせることとなる。
 燐が手にしていた魔法円からヒュウヒュウと強い風の音が溢れ出たかと思うと、燐の周りを遊ぶように飛び回る蝶が4匹ほど現れた。
 正確にはそれは蝶ではなく蝶に憑依して活動する虫豸[チューチ]である。
 見た目は綺麗なのだが、悪魔は悪魔。そして廉造にとっては悪魔以上の存在―――虫である。
「ううううわあああああっ」
 勢いよく教室の端まで逃げた廉造に竜士は溜息を零した。
 それを見ながら燐は苦笑した。
 蝮がどう教えても燐には何故かベルゼブブの眷属―――蟲しか呼ぶ事が出来なかった。
 その所為で魔法円の実技練習の際は柔造や盾が魔法円を見た瞬間に逃げ出すような始末だった。
「わあ綺麗!すごいね、燐!」
「あー……おう」
 きらきらと目を輝かせるしえみとは対照的にガクガクと教室の端で震える廉造に燐は小さく溜息を零した。
 しえみには悪いが廉造のあまりに強い拒否反応に燐の中で燐火が酷く落ち込んで胸が痛かった。
 仕方がない、燐火は燐と違って手騎士の素養以前に魔法円の授業をこっそりサボっていたから自分の素養を理解していなかったのだから。
「……俺、才能ない方が良かったかも」
 燐は胸元を押さえ、がくりと肩を落とした。
 そんな燐を心配そうにふいよふいよと美しい蝶たちは飛び回るのだった。



⇒あとがき
 燐が実はベルゼブブの眷属しか召喚出来ないとかだったら廉造ルートのフラグへし折り過ぎていかんと思ったけどちょっと一回やりたかったのでやってみました。
 今度からやりたいけど話の展開的に不味いと言う話はNGに分類しようかと思います。
 うへへ、短いけど超楽しかった。
20110713 カズイ
20130104 加筆修正
res

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