□朝から元気

 末の弟である廉造に友達と紹介された少女はぱたぱたと尻尾を揺らす不思議な少女やった。
 名を奥村燐。十六年前、じいさんや兄貴、門徒が何人も殺された青い炎を灯すサタンの仔。
 坊に向けて青い炎を燃え上がらせた時は正直肝が冷えたし、廉造の友達がサタンの仔やったなんてって思うた。
 正直俺かてサタンは憎いし、許せん。
 でも燐ちゃんが言うようにあの青い夜に燐ちゃんは無関係や。
 むしろ燐ちゃんかてあのサタンの被害者や。
 降魔剣に炎を移植して力を封じてたとは言え、燐ちゃんが話してくれた小さい頃の話にはサタンの影が重く伸し掛かっとった。
 二卵性の双子である奥村雪男の事もそうや。
 双子の姉弟やのに監視やなんやて……ほんま情けないけどそうせなあかんほど弱いんが人なんやろうな。
 ほんま、燐ちゃんは強い子や。
「……んぅ」
 手を伸ばして乱雑に伸びた黒髪を優しく梳けば、嫌そうに掃われる。
 それが可笑しくてもう一度伸ばせば燐ちゃんは完全に拒否するように寝返りを打った。
「なあ燐ちゃん……堪忍な」
 未だ夢の中の燐ちゃんの身体に覆いかぶさるように腕を伸ばし、静かに唇を奪う。
 いくら寝汚い子やゆうても流石にやり過ぎたら目ぇ覚ますやろうから程々に。
 ぬるりと血色があまり良いとは言えない唇の輪郭をなぞる様に舌を這わせる。
 その感覚が不快なのか、唸り声を上げる燐ちゃんにくすりと笑いながら俺はもう一度燐ちゃんの唇に口付けた。
「んあ……ってぇ……」
 むにゃむにゃとまだ半分眠りの世界なのだろう燐ちゃんが片目を擦りながら俺を見上げる。
「……じゅうぞ?」
 呂律も上手く回ってない燐ちゃんに思わず笑いながら、俺は起き抜けの燐ちゃんの唇に口付けた。
 別に味がするわけでもないし、己の欲求満たすだけの行為や。
 柔らかい唇を味わうように啄めば、燐ちゃんは閉ざしていた唇を開く。
 まだ眠たいだろうにと思いながらも燐ちゃんが開いた唇の隙間から舌を忍び込ませ、差し出してくれた舌に絡ませて貪る様に口付ける。
「んん、ふ、は、んむ」
 鼻から抜ける甘い声に目を細め、恍惚した燐ちゃんの額を撫でるようにして前髪を避ける。
 寝相の悪さからとっくに布団から抜け出していた細腕を俺の首の後ろに伸ばして拙くも答えてくれる燐ちゃんは可愛くてしゃあない。
 キスだけやなんて物足りんから、小ぶりではあるけど俺の手のひらにすっぽり形の良い胸に手を伸ばし、Tシャツの上から形を歪ませるように揉んだ。
「んあっ」
 びくりと思いの外過剰に反応した燐ちゃんに思わず唇が離れてしもうたけど、また唇を重ねながら胸を揉む。
 あーあかん。朝っぱらから息子が元気になってしもうた。
「……ほんま、燐ちゃん堪忍な」
「つかそろそろ雪男が……あー来た来た」
 ドタドタと遠くから足音が聞こえる。
 ああ今日も小舅が乱入するんか……ほんま勘弁してほしいわ。
 先に手ぇ離したんはそっちやんか。
「……なあ燐ちゃん」
「あ?何がだ?」
 眉間に皺を寄せ、首を軽く傾げた燐ちゃんは欠伸を一つして俺の身体を引っ張る。
「うおっ」
「つか眠い……」
「お誘いは嬉しいんやけど燐ちゃん。元気な息子をはよ静めな俺、雪男くんに怒られるんやけど……」
「知るか」
「えらいあっさり断られてしもたっ。あー……まあええか」
 一応俺70sあるはずなんやけど、燐ちゃんったら相変わらず力持ちゆうかなんとゆうか……
 俺は苦笑しながら足音を無視して寝息を立て始めた燐ちゃんの身体を抱きしめて布団を被り直した。
 小舅がなんや。俺も今日は寝るで!

(もういい加減姉さん返してください!!)
(燐ちゃんは俺の嫁やし。誰が返すか阿呆!)
(あーもううるせー!寝かせろ!!)



⇒あとがき
 初青エク小説が柔燐ってどういうことwww
 しかも女体化って……流石私!主人公=受=女体化大好きだなおい。
 コミック派ですが柔燐だけじゃなくて志摩家×燐が好きになりました。もっと一杯志摩家の人たちと絡めばいいのにと心底思いました。
 早く7巻でないかな!!
20110612 カズイ
res

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