□約束

 結局、勝負に決着はつかなかった。
 風祭も天城もゴールを決めてしまったからだ。
 天城の不調脱出や、風祭の成長。
 チームメイトとしてはうれしいことなのだが、ゴールを決められたのはまったくうれしくない。
 翼が不機嫌になってそう考えていると、玲がグラウンドに現れた。
「監督」
 天城が一歩前に出て玲に向かって切り出した。
「俺、ドイツに行きます」
 衝撃の一言。皆口々に話し始めた。
 動揺しない将を見て、翼はこの試合が天城のためと悟った。
 同じく表情を余り変えていない面子は感づいていたんじゃないかと思いながら、あえて気づかないフリをした。
「翼さん!」
 皆がわらわらと帰り始めた頃、将が翼を呼び止めた。
「何」
「明日の午後、ちょっと付き合ってほしいことがあるんです」
「……はあ?」
「二時ですよ。忘れないでくださいね!」
 有無を言わさず、将は郭が翼を慰めたあの公園の名前を告げ、水野の方へ走って向かった。
「なんなんだ……?」
 困惑する翼の問に答えるものはいない。

  *  *  *

「来てしまった」
 翼が公園の入り口にたどり着いたのは二時少し前。
 入り口に突っ立った翼は大きなため息をついた。
「あれ?椎名?」
 公園から出てきたのは上原と桜庭。
 この公園になにかあるのか?と思わず思ってしまうほどここではよく選抜のメンバーに会うものだ。
「何してんの?」
「待ち合わせ」
 なぜか理由はわからないが、二人は顔を見合わせた。
「……誰と?」
 恐る恐る上原が翼に尋ねた。
「将とだけど」
 そういうと二人は再び顔を見合わせた。
 そんな行動に一抹の不安がよぎった翼は、急いでUターンした。
「ちょっ、待てよ!」
「早まるな!」
 慌てて桜庭と上原は走り出そうとした翼を捕まえた。
「はーなーせー!!!!」
「なんもないって!」
「むしろ風祭こないー!」
「……はあ?」
 思わず呆れ声を出しながら、翼は抵抗をやめた。



⇒あとがき
 桜庭と上原は単に出したかったからなだけです(笑)
20020415 カズイ
20070306 加筆修正
res

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